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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1122
『狐火の辻』 竹本健治
「このミス」2021年版 : 72位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2020年4月20日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2020年1月>
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『狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役』、『せつないいきもの 牧場智久の雑役』、No.884「涙香迷宮」に続く、“牧場智久シリーズ”の4作目です。
ただこの牧場智久が登場する作品は“ゲーム三部作シリーズ”を始めとしてそれ以前にも多くあるので、最初は少年だった牧場智久の成長を描くサーガ的な楽しみ方も出来るシリーズとなっています。
そしてシリーズ前作の『涙香迷宮』は「このミス」で1位になり本格ミステリ大賞を受賞するなど大変高い評価を受けたわけですが、本作はシリーズ主人公である牧場智久がメインでガッツリと活躍するタイプではないこともあって、「このミス」1位の前作を含む過去シリーズ作品を読まずにいきなり本作から読んでも問題なく楽しめると思います。
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冒頭からいくつかのストーリーが並行して語られ始めて、それらは全く無関係のようであるのですが、車に撥ねられた被害者が消えてしまったり、いじめっ子が森の奥で幽霊と会ったり、タクシー運転手が恐怖体験をするなど、湯河原を中心とした怪談や都市伝説のような話だという共通点があります。
そんな不思議な事故やエピソードに関連性を感じ取った楢津木刑事と交通課の岩淵&北条(薫子)は、それぞれ担当する案件を追いつつ定期的に集まって居酒屋探偵団のごとく推理していくのですが、そこに助っ人としてアドバイスを送るのが18歳にして本因坊となった天才棋士の牧場智久です。
居酒屋で話を聴いたり電話で状況を聴いたりと、今回の牧場は現場に赴いて捜査するのではなく話を聴いただけで謎を解くためのヒントを与えていくので、今風に言えばリモート推理のようでして、それゆえに相変わらずの天才的な閃きと推理力がより際立って感じられました。
ただどうしても見せ場自体は少ないので牧場目当てで読むと物足りなさを覚えそうだし、やはり全く接点の見えない謎めいたいくつもの話が目的地も分からぬまま進んでいくこともあって、そんな五里霧中状態で読み進めるのが辛く感じてしまう人もいるかもしれません。
それに「このミス」1位作品の続編ということで大傑作を期待してしまっても拍子抜けしてしまいそうではありますが、しかし本作の場合は掴み所のないところから始まって徐々に謎が解け話が繋がっていくという過程がとても面白く、そこに怪談や都市伝説が絡むことで謎の魅力がより増していくというタイプなので、怪談を聴くような心構えで読んでみれば前作とはまた異なる不思議で謎めいた推理劇を堪能できるのでは。
個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “竹本健治” 関連記事 】
> No.1122 「狐火の辻」
> No.0884 「涙香迷宮」
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