『欺瞞の殺意』 深木章子 > 「このミス」完全読破 No.1126
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1126
『欺瞞の殺意』 深木章子
「このミス」2021年版 : 7位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 7位
読了日 : 2020年6月20日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2020年2月>
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舞台となるのは昭和41年7月のQ県福水市。
名だたる資産家である楡家の先代当主・伊一郎の三十五日法要が楡邸で営まれ、故人の家族と仕事上ごく近しい間柄にあった人物のみが集まる中、そのうちの二人が殺害される事件が発生。
犯人も参加者の中にいることは明らかな状況で捜査が進んでいくと、容疑が濃くなっていた人物が自ら出頭して犯行を認めて...。
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といった本格ミステリらしい館内での殺人事件のシーンが序章的な役割で、次の章からは無期懲役刑となった犯人が仮釈放されシャバに戻って来た(事件から40年以上後の)平成20年に時代が飛び、その犯人と事件関係者の一人との書簡(手紙)のやり取りが描かれるのですが、読者はその書簡そのものを読んでいくことになります。
ちなみに、サブタイトルにはやり取りする二人の名前が書かれているため、序章を読む前にそのサブタイトルを見たうえではっきりと記憶してしまうとネタバレになってしまうのでご注意を(まあ序章は短いので先に犯人の名前を知ってしまっても大きな影響はないでしょうが)。
そしてその書簡というのが、二人のうち関係者の方は昔からのミステリ小説好きで、犯人の方は獄中にミステリ小説を読み漁っていたこともあって、40年前の事件の真相を推理し合うという驚くべき内容でして、片方が推理すればそれを読んだもう片方がその推理を否定したうえで新たな推理を書き綴るという展開になるため、これはいわゆる多重解決ミステリなのですね。
さらに書簡でのやり取りが終わった終盤の章においても、新たな探偵役が登場して(二人の書簡を基にして)真相を浮かび上がらせてしまうという驚くべきクライマックスが待ち受けているのです。
となると推理と新事実の応酬でかなり激しく盛り上がるド派手な推理合戦になると思われるかもしれませんが、ただ老いた二人による書簡という形式なので印象としてはとても静かで落ち着いた推理戦なため、そこで物足りなく感じてしまう人もいるかもしれません。
とはいえ、そんな書簡という形式だからこそ生まれ得た冷静なうえに鋭さの光る推理戦は読み応えありますし、そこに恋愛感情が絡むことによって内なる情念が推理戦に魅力的な熱をもたらしているので、派手さやインパクトには頼らない大人のための多重解決ミステリ劇を堪能できるのではないでしょうか。
個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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