『エージェント 巡査長 真行寺弘道』 榎本憲男 > 「このミス」完全読破 No.1119
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1119
『エージェント 巡査長 真行寺弘道』 榎本憲男
「このミス」2021年版 : 54位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2020年2月28日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 文庫本 <2019年11月>
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『巡査長 真行寺弘道』、『ブルーロータス 巡査長 真行寺弘道』、『ワルキューレ 巡査長 真行寺弘道』に続く“巡査長 真行寺弘道シリーズ”の4作目です。
著者の榎本憲男は、劇場支配人、プロデューサー、脚本家、監督(『見えないほどの遠くの空を』)と、常に映画畑で活躍して来た人物です。
そして(共著や映画のノベライズ作品を除けば)2016年に『エアー2.0』を発表して本格的な作家デビューを果たし、いきなり大藪春彦賞の候補に選ばれるなど高い評価を受けることに。
さらに2018年に本シリーズの1作目を出すと、同年に2作目、翌年(2019年)には3・4作目と間を置かずにシリーズ新作が刊行されまして、(まだミステリランキング等での結果は出ていないとはいえ)1作目は「このミス」で36位、3作目が37位と惜しい順位に入っていますし、一部からマニアックながら熱烈な支持を受けてもいるので、今後大きく化ける可能性のあるシリーズなのではないでしょうか。
なお、過去作の内容に触れる場面があり、共通して登場する人物も何人かいるため、1作目から順に読んだ方がより楽しめるとは思いますが、1・2作目が未読な自分でも問題なく楽しめているので、気になる巻や手に入った巻から読み始めるのでも良いのでは。
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このシリーズの主人公について説明してみますと、シリーズタイトルにもなっている真行寺弘道は50代ながら捜査一課のヒラ刑事なのですが、オーディオ(ロック)狂で自分の時間を大切にし(傍から見ると)自由に生きているという刑事としてはかなりの変わり者ですし、それでいて(だからこそ)他人とは違う目線・思考で事件を追い解決に導くなど捜査能力は高く、しかし出世欲がないどころか拒否しているためいまだヒラ刑事、というキャラクターです。
そしてこのシリーズの特徴としては、刑事サスペンス小説ではそこまで深く取り扱われなさそうな専門的なテーマが深く絡んで来ることでして、今回は“政治と経済”が大きなテーマに。
まず政治でいうと、真行寺が事件の関係者を探る中で政治家と深く関わっている人物に疑いを持ち、真行寺自身も大物政治家とのコネがあることから政界人脈に割って入りつつ捜査を進めていくのですが、それはまさに前例や慣習に囚われない変わり者刑事の真行寺だからこそ出来る捜査劇となっていますし、モデルにしたのが誰であるのか明らかに分かるような政治家が次々と登場するのも楽しみ所の一つとなっています。
そんな捜査が進んでいくと、いつの間にやら今度は経済の世界に足を突っ込んでいくことになりまして、終いには“事件の謎を解いているつもりがいつの間にか経済の謎を解く話になっているのでは?”と思ってしまうくらいに経済の問題に深く関わっていくことになるのですね。
そういった、普通の警察(刑事)小説とは明らかに違う作風・魅力を持つ異色の作品で、さらに専門分野に関する描写に対して難しく感じてしまうかもしれないので、やはり好む人をかなり選ぶと思います。
とはいえ、他の警察(刑事)小説にはないマニアックで知識欲をくすぐる面白さこそが本作およびこのシリーズの特長で、それゆえに一部から熱狂的な支持を受けているわけですし、政治を扱っているからといってどちらかに肩入れして著者の主張を入れ込むという事もなく比較的フラットな目線で書かれているので誰でも気軽に楽しめるに違いありません。
それに、難しめの会話ややり取りの合間に描かれる(思わずくすりとしてしまうような)ユーモラスさが絶妙のアクセントとなっているので(個人的にはクライマックス直後の展開に心の底からニヤニヤしてしまいました)、シリーズ愛読者であれば本作も楽しめるだろうし、シリーズ未読であるけれど型破りな警察(刑事)小説を堪能してみたいという方には本作(および本シリーズ)をお薦めしたいですね。
個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “榎本憲男” 関連記事 】
> No.1119 「エージェント 巡査長 真行寺弘道」
> No.1091 「ワルキューレ 巡査長 真行寺弘道」(後日更新予定)
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