『ドミノin上海』 恩田陸 > 「このミス」完全読破 No.1121
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1121
『ドミノin上海』 恩田陸
「このミス」2021年版 : 26位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2020年4月2日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2020年2月>
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『ドミノ』に続くシリーズの2作目です。
2001年に発売されたその前作は「このミス」でも12位にランクインするなど評価を受けましたが、それから約20年ぶりに発売された続編というのが本作となります。
なお、前作から(作中の)時間が経ち舞台も変わっているとはいえ、引き続き登場する人物が何人かいて、前作の内容に触れる場面もあり、そこで前作のストーリー的なネタバレもあるので、前作から順に読むことをお薦めします。
ただ、自分も前作を読まずにいきなり本作から読んだのですがそれでも特に問題はなかったですし、前作を後から読んだらそれはそれで前日譚的な感じで楽しめると思うので、まあ気になった方から読んでみるということで良いのではないですかね。
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今回はタイトルの通りに上海を舞台にしていまして、多くの人物の目線による群像劇形式で描かれていきます。
その登場人物たちを簡単に説明しますと、上海で寿司デリバリー会社を立ち上げた日本人夫婦に、その妻とは元同僚という関係の旅行者二人組、愛ペットが料理となって出て来たショックで監督が使い物にならなくなったため右往左往している映画撮影スタッフに、ペットを調理した料理長に、ペットの霊に、撮影スタッフに呼ばれて来た風水師。
さらには現地の彫刻家に日本人画廊に骨董品店店員、ナルシスト警察署長、動物園から脱走を計っているパンダにそれを阻止しようとするベテラン飼育員など、上海の地で困った状況に陥ったりその元凶だったりする大変賑やかな人たち(そして動物たち)がそれぞれの目的を果たそうとパニック状態で動き出すと、別々の方向に進んでいた物語たちが次第に一か所に向けて雪崩れ込んでいくという、まさしくドミノ倒しのような勢いと迫力のある作品となっています。
ただ、登場人物目線の中にパンダがいることからも分かるようにフィクション(コメディ)要素が強く、“いくつもの伏線が次第に絡み合って来て最後に驚くべき真相にたどり着く”といった本格ミステリ技法重視の論理的なドミノ倒しでもないので、そういった期待をしてしまうとこの作風に呆れてしまうかもしれません。
とはいえ、それぞれの人物の物語だったものが一絡みするごとに加速を増してゴールに向かって突き進んでいく様はまさにドミノ倒しを観ているかのような興奮とカタルシスを味わえますし、登場人物も多く複雑な展開でありながらそれを感じさせないくらいにドキドキしたり笑ったりと楽しめると思うので、一度読み始めてしまえば最後まで止まることなく読み進んでしまうのではないでしょうか。
個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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