『桃源』 黒川博行 > 「このミス」完全読破 No.1120
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1120
『桃源』 黒川博行
「このミス」2021年版 : 69位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2020年3月8日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年11月>
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本作には、2013年発表のNo.645「落英」に登場した刑事・上坂が再出演します。
なのでシリーズ2作目という見方も出来るのですが、ただこの上坂は一応主人公コンビの一人ではあるものの、前作でも本作でも(コンビのうちの主人公格というよりは)主人公格の相棒的な役割となっていて、前作と本作とでは主人公格の刑事が違う人物ということもあり、シリーズものという感じはあまりないですね(今後“上坂が相棒役となるシリーズ”と化す可能性はありそうですが)。
なので本作から読んでも何の問題もなく楽しめるとはいえ、『落英』の内容に関する話題に触れる場面もあるので、本作の前でも後でもいいので『落英』の方も読んでみれば二倍楽しめるのではないでしょうか(ただ“『落英』のネタバレはなるべく見たくない”という場合はまず先に『落英』から読むことをお薦めします)。
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大阪府警泉尾署の刑事である新垣遼太郎と上坂勤は、沖縄の互助組織である“模合”で集めた仲間の大金を持ち逃げした男を追うことになったのですが、この男は持ち逃げだけでなくもっと大きな犯罪に関わっていることが分かり始めたため、二人は男を追って沖縄へと向かうことに....。
というわけで近年の黒川作品における鉄板であるおっさん二人組による犯罪が絡んだ物語でして、今回もしゅんとしている新垣と映画オタクである上坂の刑事コンビによる関西弁を使った軽妙な掛け合いがとにかく面白く、そこを読んでいくだけでも単行本一冊分の満足度は充分に得られてしまいますし、それに仲良いおっさん二人による沖縄デートを見守っているかのようで微笑ましくもありましたね(とはいえあからさまなBL要素はなくて単に仲が良いというだけなのでご安心を)。
ただ肝心の捜査パートの方も、大阪に沖縄にと舞台を変えての捜査劇が繰り広げられますし、次々と大掛かりな犯罪が明らかになるなど読み応えたっぷりであるのですが、とはいえいつもの黒川作品とは異なる部分もありました。
まあ黒川作品といえばイメージするのはクライムノベル(犯罪小説)で、それがたとえ警察(刑事)小説であっても、犯罪者目線のパートが並行して語られたり、刑事である主人公自身がかなりの悪徳警官だったりと、クライムノベル要素が煮えたぎるほどにぶち込まれています。
それに対して本作は、主人公コンビが真面目ではなく小狡いところもあるけれど法を犯すほどの悪人ではないため、結構ギリギリなところを攻めてはいるのだけれどあくまで刑事(警察官)としての捜査を行っていくので、クライムノベル要素はほとんどなく、それゆえに本作の煽りにも“著者ひさびさの正統派警察捜査小説”と書かれているのです。
なのでいつもの黒川作品のようなギラギラギトギトとしたクライムノベル要素に期待してしまうと歯ごたえを感じられないかもしれませんが、ただその分王道の捜査サスペンスを堪能でき、主人公コンビによる掛け合いも終始楽しめるので、(クライムノベル要素が薄いことをあらかじめ押さえておくなら)黒川作品好きの人であれば心から満足できるだろうし、クライムノベル要素に抵抗あって黒川作品に手を出しにくかったという警察小説好きな人にもまず最初に読む黒川作品として本作をお薦めしたいですね。
個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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