『アンデッドガール・マーダーファルス1』 青崎有吾 > 「このミス」完全読破 No.1113
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1113
『アンデッドガール・マーダーファルス1』 青崎有吾
「このミス」2017年版 : 24位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 20位
読了日 : 2020年1月29日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 文庫本 <2015年12月>
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2019年までの青崎作品といえば、高校生が主人公の"裏染シリーズ"に『早朝始発の殺風景』、職業探偵コンビによる"ノッキンオン・ロックドドア シリーズ"といった青春系本格ミステリ作品がほとんどで、これらが高い人気と評価を受けて代名詞的な作風となっています。
ただそんな中にあって唯一の例外であるのがこの"輪堂鴉夜シリーズ"でして、まず物語の舞台となるのが(現代の日本ではなく)19世紀末のヨーロッパ。
しかも、吸血鬼や人狼や鬼などの怪物・妖怪が存在する世界であるというパラレルワールド的な設定もあるので、他の作品群とは雰囲気が全くといっていいほどに違っているのですね。
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この1巻では、第1章は吸血鬼、第2章は人造人間にまつわる事件が描かれまして、その事件の謎解きに挑むのが、怪物専門の探偵・輪堂鴉夜、助手の真打津軽、メイドの馳井静句から成る妖しい東洋人(日本人)の"鳥籠使い"一行。
怪物が深く関わっているため事件自体もその謎もかなり奇妙で不可思議なものとなっているのですが、謎を解く探偵側にもかなり異様な秘密が隠されていることから(それは第1章で明らかになるので、読んでみようと思っている方はWikipediaや感想サイト等でネタバレを目にしてしまう前に1章だけでも早めに読んでしまうことをお勧めします)、探偵も事件の関係者も皆が不気味で怪しく、19世紀末のヨーロッパという舞台とも相まって怪奇小説のようなおどろおどろしい雰囲気に包まれています。
そんな世界で起きた事件の謎に対して、探偵はそれぞれの怪物(吸血鬼と人造人間)の特徴・性質・能力を踏まえたうえで謎を解き明かして真相に迫っていくため、その推理劇は通常の殺人事件とは異なる(この怪物だからこその)特殊設定ミステリとなっていまして、そこから生まれる本格ミステリとしてのロジカルな読み応えが抜群なのは言うまでもありません。
青崎作品の特徴の一つであるギャグめいた台詞の応酬や軽快なやり取りも健在であるため、おどろおどろしさの中にもコミカルさが絶妙に混じり込んでいてまさに“ファルス(笑劇)”が魅惑的に創り上げられていますし、作品の舞台や登場人物が非現実的な世界に変わるだけで(いつものような軽いノリの掛け合いも)印象が全く違って感じられるのは何とも面白いですね。
というわけで、外観的には(2019年までに発売された)これまでの他作品とは大きく異なっているように見えるとはいえ、中身の方はこれまでの作品と同様の特長や魅力が変わらず詰め込まれているので、青崎作品好きな人はもちろん、むしろ“青春系ミステリが苦手なので青崎作品は避けていた”けれど怪奇小説的なミステリは好きだという人に特に強くお薦めしたい作品でした。
個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.1114 「アンデッドガール・マーダーファルス2」
> No.1113 「アンデッドガール・マーダーファルス1」
> No.1111 「ノッキンオン・ロックドドア」
> No.1080 「早朝始発の殺風景」(後日更新予定)
> No.0934 「図書館の殺人」
> No.0761 「水族館の殺人」
> No.0729 「体育館の殺人」
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