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2020年1月27日 (月)

『大天使はミモザの香り』 高野史緒 > 「このミス」完全読破 No.1110

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1110

 『大天使はミモザの香り』 高野史緒

   「このミス」2021年版 : 投票数0

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2020年1月12日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2019年11月>


大天使はミモザの香り

高野 史緒

講談社 2019.11.20

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 所属していた三つのアマチュア・オーケストラ(アマオケ)が全て消滅してしまった音羽光子は、プロのソプラノ歌手(自称)である社長夫人が新たに作ったアマオケ“東京アークエンジェル・オーケストラ”のオーディションになんとか合格。

 このアークエンジェルは、有名なプロ独奏者との共演、そのプロ奏者が弾くのはヨーロッパから海を越えてやって来る時価二億円以上ともいわれるヴァイオリンの名器“ミモザ”、さらに開催されるのは最高傑作のコンサートホールであるアルペジオ・ホールという、まだ実態のないアマオケとしては異例の初演コンサートが(オーディションの時点で)決定済み。

 そんな公演の数日前に、ミモザの所有者でもあるラ・ルーシェ公国(フランスとイタリアの国境に位置する小さな国)の大公・アルベールを歓迎するレセプションを開いたものの、大公がミモザを使っての演奏を披露しようとしたその時、厳重な警備の元で楽屋内に置かれたうえに、特殊なロックシステムの鍵がかけられたヴァイオリン・ケースの中から、ミモザがいつの間にか消えていることが分かって....。

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 というわけで本作は、アマチュア・オーケストラを舞台とした音楽ミステリです。

 まあ音楽ミステリとはいえ、密室空間の中から時価数億の名器が消失するという本格ミステリっぽい事件が起きるのですが、その事件の謎を解くべくオーケストラの団員である探偵役が推理して....、といったようにはなりません。

 本作の主人公である光子は、事件の謎を気にしつつもそれを発端にして起きていく騒動に巻き込まれることになりまして、なぜか大役に抜擢されたり、大公と極秘デートのようなことをする羽目になったり、迎えた公演でも一悶着があったりと、ハチャメチャな展開が繰り広げられる中、次第に事件の真相も明らかになっていくことに。

 そういった話の中で一番力を入れて書かれているのが、四十二歳独身彼氏なしで、ヴァイオリン奏者としても華がなく才能を感じさせないけれど下手なわけではないので使い勝手が良く、そんな自分を自虐している光子自身の物語で、とはいえ暗くじめじめと悩んでいるわけではなくて逆に吹っ切れているような明るさが感じられますし、事件や騒動を通して次第に自分らしい生き方に気付いていく姿が、ドタバタコメディ的な物語の中で描かれていくのですね。

 なので、謎解きミステリ的な要素や演奏シーンで盛り上がるような音楽ミステリを期待してしまうと手応えを感じられないかもしれないものの、個性的な登場人物たちが大騒動を巻き起こす漫画的な(『動物のお医者さん』の佐々木倫子が本作を原作にして描いたらかなり面白くなりそうな)魅力に満ちているので、ミステリ作品としては肩肘張らずに軽い気持ちで読んでみれば充分なほどに楽しめるのではないでしょうか。


 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “高野史緒”関連記事 】

  > No.1110 「大天使はミモザの香り」
  > No.1039 「翼竜館の宝石商人」(後日更新予定)
  > No.0566 「カラマーゾフの妹」


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