『暗約領域 新宿鮫XI』 大沢在昌 > 「このミス」完全読破 No.1107
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1107
『暗約領域 新宿鮫XI(11)』 大沢在昌
「このミス」2021年版 : 9位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 16位
読了日 : 2019年12月16日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年11月>
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No.27「新宿鮫」、No.43「毒猿」、No.75「屍蘭」、No.171「無間人形」、No.262「炎蛹」、No.348「氷舞」、No.400「灰夜」、No.419「風化水脈」、No.426「狼花」、No.456「絆回廊」に続く、”新宿鮫シリーズ”の11作目です(『絆回廊』の後に発売された短篇集No.553「鮫島の貌 新宿鮫短編集」も含めると12作目)。
数多くの傑作を生み出して来た大沢在昌の代表的(代名詞的)なシリーズであるだけでなく、日本の警察小説を代表するシリーズでもありますが、前作長篇から8年ぶりとなる待望の新作がついに発売されました。
1作目の発表が約30年前の1990年、長篇だけで11作目となる歴史の長いシリーズということもあり、本作から読んでも問題なく楽しめるように書かれているものの、本作は前作長篇『絆回廊』と深い繋がりのある物語となっていて、前作に引き続いて登場する重要人物がいたり、前作のエピソードに触れる場面も多くなっています。
なので、本作をスムーズに読みたいのであれば、あらかじめ『絆回廊』を読んでおくことをお薦めします(まあ一番のお薦めは1作目から順に読んでいくことではありますが)。
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しゃぶ取引の密告を受けたため、現場であるヤミ民泊の張りこみの準備をしていた鮫島は、そこでアジア人男性の射殺死体を発見したため、捜査一課を中心とした捜査が始まったのも束の間、公安部が捜査権を持っていってしまって....。
というわけで今回も、(日本を含む)東アジアの犯罪組織が絡んだ事件を鮫島が捜査していくのですが、前作長篇では鮫島にとって二つの大きな別れがあったのに対し、本作では二つの新たな出会いがあります。
まず一人目は、鮫島の唯一の後ろ盾であった上司・桃井課長の後任としてやって来た阿坂景子で、“基本を守る、ルールを曲げない”が警察官としての信念という、捜査のためなら多少のルール違反など構わずに行動する鮫島とは相反するようなきっちりとした人物なので、そんな阿坂課長が果たして鮫島にとって敵となるのか味方になるのかというかなり気になる展開となりますし、それにより今までの新宿鮫シリーズにはなかった(近年の警察小説のような)新鮮な読み味が生み出されています。
そしてもう一人というのが、阿坂課長から命じられコンビを組むことになった矢崎隆男で、これまで一匹狼としてやってきた鮫島に相棒が、しかも新人刑事の相棒が出来たことにより、高い能力の片鱗を見せる矢崎の将来に期待を寄せたり、その一方で危険を伴う捜査が多かったり上層部や公安等に敵視されている自分の相棒となることから矢崎の現状や将来を心配するなど、これまた今までの新宿鮫シリーズでは見られなかった先輩刑事(相棒刑事)としての鮫島が描かれるのですね。
その他にも、同期ながら犬猿の仲である香田とも意外な関わりを持つなど、(前作長篇を踏まえてみると)新章に突入したかのような新たな要素で盛り上がるのですが、鮫島がヤクザにも怯むことなく謎深き事件の渦中に猛然と入っていき時には危険に身を挺しつつ真相に迫っていく、という新宿鮫シリーズならではのハードボイルド系警察小説としての魅力は健在です。
ただ、そんな新宿鮫シリーズらしくない部分に違和感を覚えたりとか、その逆に過去のシリーズ作品(または近年の大沢作品)で定番的な展開から大きくははみ出さなかったり、鮫島にとって壮絶な出来事が多かった集大成的な前作長篇との比較によって、物足りなさを感じてしまう人もいるかもしれません。
とはいえ、これだけ長く続いているシリーズだからこそ生まれる定番的な面白さであり、変化の面白さだと思いますし、一度読み始めれば単行本で700ページを超えるボリュームもあっという間に感じてしまうほどの読み応えを味わえると思うので、多くの人が新宿鮫シリーズの新たな一歩を(懐かしさと次作以降への期待を織り交ぜながら)堪能できるのではないでしょうか。
個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0628 「冬芽の人」
> No.0553 「鮫島の貌 新宿鮫短編集」
> No.0456 「絆回廊 新宿鮫X」
> No.0435 「氷の森」
> No.0426 「狼花 新宿鮫IX」
> No.0419 「新宿鮫 風化水脈(新宿鮫VIII)」
> No.0417 「やぶへび」
> No.0404 「女王陛下のアルバイト探偵(アイ)」
> No.0400 「灰夜 新宿鮫VII」
> No.0348 「氷舞 新宿鮫VI」
> No.0335 「ブラックチェンバー」
> No.0292 「欧亜純白 ユーラシアホワイト」
> No.0262 「炎蛹 新宿鮫V」
> No.0171 「無間人形 新宿鮫IV」
> No.0075 「屍蘭 新宿鮫III」
> No.0043 「毒猿 新宿鮫II」
> No.0027 「新宿鮫」
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