「この“ランク外作品”がすごい!2020年版」
「このミステリーがすごい!2020年版」が発売され、ランキングが発表されたということで、これからランクイン作品を読んでみようと思っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか
2019年に発売された大量のミステリ&エンタメ作品の中から、読書のプロたちが選んだ作品がズラリと並んでいるわけで、まあ好みの問題はあるとはいえ面白い作品揃いなのは間違いないでしょう
しかし、だからといって“ランクインした作品は面白く、ランクインしなかった作品はつまらない”というわけでは決してなく、ランクインを逃した21位以下(今年は19位が3作品あったので22位以下)の作品の中にも傑作が数多く秘められているのですね
なのでここは、そんなランク外だった作品の中から読んでおくべきお薦めの作品を何点か紹介してみたいと思います
なお選んだ基準は、自分が面白いと思った作品ではありませんでして、「このミス」でランクインまであと一歩だった作品(具体的には“21位以下の作品<20点以上>”の欄に掲載された作品)の中から、他のミステリランキング誌ではランクインした作品(「本ミス」は30位以内、「文春」「早ミス」は20位以内)をピックアップしました
「このミス」 ・・・・ このミステリーがすごい!
「本ミス」 ・・・・ 本格ミステリ・ベスト10
「文春」 ・・・・ 週刊文春ミステリーベスト10
「早ミス」 ・・・・ ミステリが読みたい!
* 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページです
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時空旅行者の砂時計 / 方丈貴恵
( このミス:22位、 本ミス:7位、 文春:15位 )
No.933「ジェリーフィッシュは凍らない」(市川憂人)、No.990「屍人荘の殺人」(今村昌弘)と、近年はデビュー作ながらミステリランキングの上位に入る作品を多く輩出している鮎川哲也賞の今年の受賞作は、本格ミステリの定番的な展開の中にSF(タイムトラベル)設定が盛り込まれた意欲作です(ちなみに「早ミス」は来年度版の対象)
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或るエジプト十字架の謎 / 柄刀一 <感想記事はこちら>
( このミス:23位、 本ミス:6位、 早ミス:10位 )
エラリー・クイーンの“国名シリーズ”をオマージュしたシリーズ短篇を収録した本作は、インパクトあるトリックとテクニカルなロジックとが見事に融合しているので、正に王道の本格ミステリ的魅力を味わえると思います
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焼跡の二十面相 / 辻真先
( このミス:26位、 本ミス:27位 )
「このミス」本誌では皆川博子と“89歳×87歳 レジェンド対談”で楽しませてくれた辻真先ですが、新作では“少年探偵団シリーズ”(江戸川乱歩)のパティーシュ作品という、レジェンド作家ならではの懐かしい題材でありつつまだまだ現役作家であることを見せつけるほどの面白さに溢れた冒険ミステリとなっています
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法月綸太郎の消息 / 法月綸太郎
( このミス:27位、 本ミス:17位、 早ミス:15位 )
収録作4篇のうち2篇は、コナン・ドイルと探偵ホームズ、アガサ・クリスティと探偵ポアロを題材に、作家論・作品(探偵)論をミステリ小説に仕立て上げるという、近年の法月作品と同じように実験的な試みがなされています
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そして誰も死ななかった / 白井智之
( このミス:29位、 本ミス:5位 )
本格ミステリの王道的な舞台設定や展開で推理合戦が繰り広げられるものの、著者の特長である鬼畜エログロ要素はもちろん健在なので、白井作品でしか味わうことのできない唯一無二の本格ミステリ的魅力を味わえること間違いなしです
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( このミス:29位、 文春:9位 )
“加賀恭一郎シリーズ ”のスピンオフ的な内容で、シリーズ本編と比べるとドラマ性重視の感じもあるのですが、そのドラマ性はやはり東野作品だけあって切なさや感動が押し寄せてくるほどの読み応えがありますし、それに今回はいつもより控えめとはいえ(捜査)ミステリ部分も相変わらずの巧みさに唸らされてしまうのではないでしょうか
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( このミス:29位、 文春:6位、 早ミス:7位 )
最後のページにある絵や写真を見ると衝撃の真相が浮かび上がってくる(けれどある程度は読者自身で推理しなければならない)という遊び心に満ちた作品で、大ヒットもしたしミステリランキングの上位にも入ったので、(「このミス」では振るわなかったとはいえ)今年のミステリ小説を代表する一冊といっても過言ではないでしょう
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むかしむかしあるところに、死体がありました。 / 青柳碧人 <感想記事はこちら>
( このミス:33位、 本ミス:9位、 文春:7位、 早ミス:8位 )
日本の昔ばなしと本格ミステリとを魅惑的に融合した本作も今年のミステリ小説を代表する一冊といえそうですが、他のランキングは全てベスト10入りしているのに「このミス」だけ何故か30位台というのは、かなり不思議ではあるものの、そんなバラツキのある結果も同系ジャンルのランキングが複数あるからこその面白さだと思いますね
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教室が、ひとりになるまで / 浅倉秋成
( このミス:38位、 本ミス:13位 )
今年の特徴の一つとして“異能&頭脳バトルミステリ作品”の良作が多く発表されたことが挙げられるのですが、その代表といえば、学園モノながら特殊能力を用いたバトルとミステリとが組み合わされた本作で間違いないでしょう
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( このミス:39位、 文春:14位、 早ミス:20位 )
平成という時代の30年間に起きた社会問題などを俯瞰して描かれた社会派サスペンス&ミステリ作品なので、平成の記憶がまだ強く残っているうちに読んでおくべき作品といえるのではないでしょうか
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