「このミステリーがすごい!2020年版」が発売され、ランキングも発表されたということで、昨年までと同様に「このミス2020年版」ランキング(順位)予想の一人反省会を行って、来年以降の予想に役立てようと思います。
前回更新した、全体的な予想の反省を行う<反省会・総論編>に続きまして、今回は、作品ごとに反省を行う<反省会・各論編>です。
その反省の仕方ですが、まずは正規のランキング順に各作品ごとに反省し、続いて予想を外した作品について反省していきましょう。
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medium 霊媒探偵城塚翡翠 / 相沢沙呼 <感想記事はこちら>
( 予想 > 7位 結果 > 1位 )
3年連続での1位的中はなりませんでした....。
「このミス」では他誌(特に「本ミス」)で上位に入るようなトリッキー系本格ミステリ作品が10位前後に収まることが多いような感覚があったので(例を挙げるならば“〈その可能性はすでに考えた〉シリーズ”とか“〈マリア&漣〉シリーズ”とか)、本作も10位よりちょい上の7位に予想したのですけどね。
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ノースライト / 横山秀夫 <感想記事はこちら>
( 予想 > 1位 結果 > 2位 )
今年の1位予想作品は惜しくも2位という結果でしたが、まあ「文春」では1位になりましたし、「このミス」でも誌面に載っている“私のベスト6(参加者の投票内容を全公開したページ)”を基に“原稿到着順(記載順)”に集計すると最後の投票者の票によって1位と2位が入れ替わったくらいのわずかな差しかなかったので、かなり惜しい1位予想ではありました。
あとはやはり、歴代単独1位となる“3度目の「このミス」1位”を達成するのであれば、著者的には異色な本作でよりも、横山作品を象徴するような圧倒的な警察小説で果たしてほしいな~と思ってもいたので、次作での“3度目の「このミス」1位”に期待したいですね。
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魔眼の匣の殺人 / 今村昌弘 <感想記事はこちら>
( 予想 > 4位 結果 > 3位 )
デビュー作にしてシリーズ前作のNo.990「屍人荘の殺人」がミステリランキング3冠を達成したのに対し、本作は「本ミス」が2位、「このミス」「文春」「早ミス」が3位と、いずれも1位を狙える順位に来ているのに結局無冠に終わったので、それでも充分凄い結果ではあるのだけれど、3冠を果たすのも無冠に終わるのもそこまで差はないし巡り合わせが重要なんだな~と実感してしまいましたねェ。
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罪の轍 / 奥田英朗 <感想記事はこちら>
( 予想 > 5位 結果 > 4位 )
上位争いには確実に加わるだろうけれど1位にはならなそうだと思っていたので、「このミス」4位、「文春」2位、「早ミス」4位と、いずれも予想通りの結果でした。
ただまあ、この作品が「文春」で1位、『ノースライト』が「このミス」で1位だったら、1位がうまいことバラけて良い感じになったのですけどね。
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刀と傘 明治京洛推理帖 / 伊吹亜門 <感想記事はこちら>
( 予想 > 2位 結果 > 5位 )
かなり思い切っての2位予想だったものの、「早ミス」でまさかの1位になった時は"「このミス」では1・2位完全的中もあるかも!?"と期待が高まったのですが...。
でもデビュー作が(しかも時代小説が)いきなり5位に入っただけでも充分に凄いことですからね。
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紅蓮館の殺人 / 阿津川辰海
( 予想 > -位 結果 > 6位 )
この作品は事前に読んでいなかったので、反省は「ランクイン作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」(後日更新予定)の方に書く予定です。
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欺す衆生 / 月村了衛
( 予想 > 3位 結果 > 7位 )
「早ミス」で15位、「文春」でランクインならずという結果を見て、"月村作品は(特に"機龍警察シリーズ"以外の月村作品は)「このミス」が一番票を集めているから..."と自信を保ちつつもその一方で不安にも駆られていたので、ベスト10に入ってくれてホッとしました...。
たださすがに3位予想は高すぎでしたが、今年は予想締め切りギリギリに読んだ作品を軒並み高めの順位に入れてしまうという傾向だったためで、もっと早く読み終えて冷静になって予想していればさらに近い順位に予想出来ていたかもしれませんね(それならば『魔眼の匣の殺人』と『罪の轍』の順位がドンピシャで当たっていたのですが)。
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昨日がなければ明日もない / 宮部みゆき <感想記事はこちら>
( 予想 > 10位 結果 > 8位 )
2~4作目が3連続でベスト10入りしているシリーズなので安牌予想だと思われるかもしれませんが、それだけ連続してベスト10に入っていると"そろそろ11位以下に落ちるのではないか"という不安が強くなってくるので、ベスト10に予想するのも結構思い切りが必要だったのですよね。
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本と鍵の季節 / 米澤穂信 <感想記事はこちら>
( 予想 > 8位 結果 > 9位 )
“〈古典部〉シリーズ”を除けば12作連続ランクイン中&7作連続ベスト10入り中で、3作同時ランクイン経験もあるので、今年の期間内に出た2作が同時にランクインすることは確実だろうとは思っていまして、予想において重要なのはどちらの順位が上になるのか(またはどちらがベスト10に入るのか/2作共にベスト10入りするのか/2作共に10位台となるのか)でした。
それで「早ミス」では『本と鍵』が上でどちらも10位台、「文春」では『Iの悲劇』がベスト10入り(『本と鍵』は10位台)、「本ミス」では『Iの悲劇』が上でどちらも10位台と結果は結構バラバラでしたが、「このミス」では予想通りに『本と鍵』がベスト10入り(『Iの悲劇』は10位台)となりました。
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潮首岬に郭公の鳴く / 平石貴樹
( 予想 > -位 結果 > 10位 )
この作品は事前に読んでいなかったので、反省は「ランクイン作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」(後日更新予定)の方に書く予定です。
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Iの悲劇 / 米澤穂信
( 予想 > 15位 結果 > 11位 )
『本と鍵』の方が上の順位でこちらは10位台、という予想は当たりましたが、10位とわずか1点差の11位となるのであれば、どうせなら10位に入って連続ベスト10入りの記録を継続してほしかったですね(まあ“〈古典部〉シリーズ”を除く”という条件が付いてしまうので意味はないのかもしれませんが)。
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早朝始発の殺風景 / 青崎有吾
( 予想 > 31位以下 結果 > 12位 )
読了済みのランクイン作品の中で唯一30位以内に予想しなかった作品で、「本ミス」6位、「早ミス」10位、「このミス」23位のNo.1082「或るエジプト十字架の謎」(30位以内に予想せず)もそうですが、トリッキー要素が薄めの正統派本格ミステリ作品は、票を集めやすいタイプなのかそうでないのかが自分には判断しにくくて、予想が難しいですね。
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殺人鬼がもう一人 / 若竹七海
( 予想 > 21位 結果 > 12位 )
読み終えた時には“これはランクインしそうだぞ”と思ったものの、その時すでに「早ミス」ランクイン(14位)という結果が出ていたので、20位以内に予想するのはなんかカンニングして答えを書いたのと同じような感じがして出来なかったのです....。
なので反省点としましては、発売当時から読もうと思っていた1月発売作品を結局11月になるまで読まなかったことに尽きますね。
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マーダーズ / 長浦京 <感想記事はこちら>
( 予想 > 16位 結果 > 14位 )
順位的にはかなり近かったとはいえ、本当は20位台が合いそうな気がしたのだけれど他の作品との兼ね合いからとりあえず10位台予想に入れていて結局最後までそのまま下げずに残った、といった感じだったので、“予想が(ほぼ)当たった”という手応えはあまりありませんでした。
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スワン / 呉勝浩
( 予想 > -位 結果 > 15位 )
この作品は事前に読んでいなかったので、反省は「ランクイン作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」(後日更新予定)の方に書く予定です。
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我らが少女A / 髙村薫
( 予想 > 18位 結果 > 15位 )
過去5作中4作がランクイン(1・3作目が1位で2作目が3位)という“合田雄一郎刑事シリーズ”の新作ではあるものの、今回はミステリ的な題材を用いて純文学を描くという内容であったため少し悩みはしました
ただまあシリーズ前作もエンタメ度がそれほど高くなかったけれどランクインしていましたし、それにこれだけ面白いのであればやはり20位以内には入ってきますよね(それでも他の作家が同じような作風で書いていたとしたらどうだったかなとは思いますが)。
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殺人犯 対 殺人鬼 / 早坂吝
( 予想 > -位 結果 > 17位 )
この作品は事前に読んでいなかったので、反省は「ランクイン作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」(後日更新予定)の方に書く予定です。
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W県警の悲劇 / 葉真中顕 <感想記事はこちら>
( 予想 > 9位 結果 > 18位 )
今年の葉真中作品も本作とNo.1078「Blue」のどちらが上になるのかが予想するうえでの注目ポイントとなっていて、読んでみた感想から本作を思い切ってベスト10入り、『Blue』を21位以下と予想したのですが、「早ミス」も「文春」も『Blue』のみがランクイン、ジャンル的に本作だけが対象となるであろう「本ミス」でも30位以内にすら入っていなかったので、これはやらかしてしまったな....と落ち込んでしまいました。
なので、「このミス」ではギリギリとはいえ20位以内にランクイン(『Blue』はランク外)という結果だったのはかなりホッとしましたね....。
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蟻の棲み家 / 望月諒子
( 予想 > 30位 結果 > 19位 )
読んでみた感想としては、ある程度の票は集めそうではあるものの、なんとなくだけれど(内容が似ているというわけではないものの)作品の雰囲気というか印象が日本推理作家協会賞を取りながら「このミス」では39位止まりだった『愚者の毒』(宇佐美まこと)と被るかな~と感じたので、良くてもギリギリ30位以内かなと予想したのですよね。
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予言の島 / 澤村伊智
( 予想 > -位 結果 > 19位 )
この作品は事前に読んでいなかったので、反省は「ランクイン作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」(後日更新予定)の方に書く予定です。
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まほり / 高田大介
( 予想 > -位 結果 > 19位 )
この作品は事前に読んでいなかったので、反省は「ランクイン作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」(後日更新予定)の方に書く予定です。
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いけない / 道尾秀介 <感想記事はこちら>
( 予想 > 6位 結果 > 29位 )
それではここから、大いなる反省会の開始となります.....。
話題先行タイプであったことは否めないとはいえ、非ミステリ作品を発表していた時期にも(ランクインはしないながらも)ある程度の票を集めていたほどに「このミス」と相性の良い道尾作品ですし、「文春」と「早ミス」でベスト10入りという結果も出していたので、その時点では“あ~もっと上の順位に予想していても良かったかな~”と思っていたほどでしたが、まさか20位以内にも入らないとは...。
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カエルの小指 a murder of crows / 道尾秀介
( 予想 > 11位 結果 > 投票数0 )
それでも『いけない』は29位になるほどには票を集めていたのに対し、シリーズ前作No.117「カラスの親指」が2009年版6位にランクインしている本作の方は、(その前作ほどのインパクトはなかったとはいえ)まさかの0票という結果で、これにはかなり驚かされました....。
ただ「文春」の方もランク外という結果からしてこの評価が正当なものだとするならば、やはり前作によって期待が高まった分(それとデビュー作から連なるシリーズ以外は頑なにシリーズ続編を書いてこなかったのにここで人気作の続編を発表したことに対して期待が高まった分)の反動がこの結果に繋がったのかもしれませんが、それでも1票も入らなかったのは自分としては意外すぎましたね(まあ0票も1・2票も誤差の範囲内だとは思いますが)。
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むかしむかしあるところに、死体がありました。 / 青柳碧人 <感想記事はこちら>
( 予想 > 12位 結果 > 33位 )
「早ミス」8位、「文春」7位、「本ミス」9位と全てベスト10内に入っていたので、“これは10位以内に予想していれば良かったかな?”と思ったのですが、「このミス」では30位以内にすら入らないとは....。
ただ、近年でも岡田秀文のNo.785「黒龍荘の惨劇」(「本ミス」5位、「早ミス」10位、「文春」14位、「このミス」21位)や西澤保彦のNo.950「悪魔を憐れむ」(「本ミス」7位、「早ミス」10位、「文春」12位、「このミス」27位)など、“「このミス」だけランク外”というパターンはいくつかあるので、そこまで驚きはしませんでしたけどね。
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泥の銃弾 / 吉上亮
( 予想 > 13位 結果 > 59位 )
この作品も予想締切ギリギリ(というか直前)に読み終えたので、冷静になる前に高い順位に入れてしまいました....。
ちなみにですが、井上真偽の『ベーシックインカム』なんかは、当初は思い切って10位に予想していたものの、冷静になって予想し直すことで徐々に順位を下げていって、最終的には20位台にまで落としてしました(結果は46位)。
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法月綸太郎の消息 / 法月綸太郎
( 予想 > 14位 結果 > 27位 )
近年の法月作品はNo.659「ノックス・マシン」(2014年版1位)やNo.924「挑戦者たち」(2017年版12位)という実験作でランクインを果たしていましたが、本作の場合は同じような実験作だったとはいえ評論色が強めだったのがそこまで票が伸びなかった要因なのでしょうかね。
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お前の彼女は二階で茹で死に / 白井智之 <感想記事はこちら>
( 予想 > 17位 結果 > 42位 )
今年の白井作品も対象期間内に発売された2作品のうちどちらが上の順位になるのかが注目となりましたが、結局ランクインは『そして誰も死ななかった』の「本ミス」4位のみで、本作にいたっては「このミス」で40位以内にすら入らないなど全く結果が出なかったので、個人的には面白く感じていただけに残念でしたね。
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夜のアポロン / 皆川博子
( 予想 > 19位 結果 > 53位 )
最近でも『鮎川哲也探偵小説選』が2018年版15位に入ったように、「このミス」では昭和の時代に発表されるも単行本未収録だった作品を集めた作品集がランクインすることが多いので、いまだに現役として作品を発表して「このミス」でも高い評価を受けている皆川博子の初期の単行本未収録ミステリ中短篇集となればランクイン確実なのではと思ったのですが、逆に現役であるために票がそれほど集まらなかったのかもしれませんね。
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ワルキューレ 巡査長 真行寺弘道 / 榎本憲男
( 予想 > 20位 結果 > 37位 )
昨年に出たシリーズ1・2作目が一部で高い評価を受けていて、「このミス」でも2作目が36位には来ていましたし、実際に3作目を読んでみたらかなり異色な警察小説だったので、期待というか願望も込めて20位に予想してみました。
まあ結果的には昨年とほぼ変わらぬ順位でしたが、ただシリーズ新作で新たな魅力的な要素が加わったら一気にランクインするほどの票を集める可能性は秘めていそうですね。
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というわけで、まずは「このミス2020年版」のランキング(順位)予想」の反省を<総論編>、<各論編>と分けて書いてみました。
そして続きまして、「このミス2020年版」としては最後の反省会となります、「ランクイン作品を事前に読んでしまおう!<反省会>」を書いてみたいと思います。
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