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2019年10月 8日 (火)

『君待秋ラは透きとおる』 詠坂雄二 > 「このミス」完全読破 No.1083

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1083

 『君待秋ラは透きとおる』 詠坂雄二

   「このミス」2020年版 : 63位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2019年9月18日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2019年6月>

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 “匿技”の持ち主を発見・勧誘し匿技を研究するのが目的の“日本特別技能振興会”に所属する麻楠均は、人材活用課の参謀役である土倉牡丹から、新たに発見された匿技士であるものの(言葉による)交渉が決裂した君待秋ラに対する、暴力を使った勧誘(制圧)の指示を受けることに。

 君待の自宅前で君待と相対した麻楠は、体の表面から鉄筋を取り出す“鉄筋生成”の匿技を使って君待を説得、あるいは拘束しようとするも、任意の物質を見えなくさせる“透明化”の匿技を持つ君待によって頭部を透明にされ、任務は失敗。

 しかし、麻楠が頭部を透明にされ視覚を奪われた状態でなお君待に訴え掛け続けたのが伝わったのか、君待はあまり乗り気ではないながらも振興会に入ることになって....。

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 というわけで本作は、特殊能力的な“匿技”を持つ人間が稀に生まれるという世界で、そんな“匿技”を持つ“匿技士”が集う組織が舞台となっているため、各人ごとに異なる匿技やそれを利用した知略を駆使した異能バトル&サスペンスが展開していきそうに思えます。

 ただ物語の前半は、主人公(君待秋ラ)の匿技士としての葛藤やトラウマなどに焦点が当てられつつも、匿技士たちそれぞれの匿技の仕組みや発動条件や効果などを科学的に分析・解説していく場面が中心となっていまして、その部分はSF的な読み応えも味わえるのでは。

 そして終盤に入ると、待ってましたと言わんばかりの異能バトルが繰り広げられるのですが、前半部分で匿技の分析・解説がじっくりとなされていたこともあって、激しいアクションも頭脳戦も(非現実的なバトルであるにも関わらず)リアルな感触をひりひりと感じさせられるほどの迫力が生み出されていました。

 ただ異色なジャンルである異能バトルものの中でもさらに異色な作品なため、異能バトルを期待して読んでしまうと情報量と説明文の多い前半部分は退屈に思えてしまうかもしれませんし、“事件が起きてその真相を推理する”といった感じの分かりやすいミステリ展開でもないので読む人によってはミステリ的な面白さを全く感じられないかもしれません。

 とはいえ、前半における“匿技”の分析・解説場面では、ロジックを積み上げていくことで匿技の謎を解き明かしていくというミステリ的な刺激を伴う読み味がありますし、後半における異能バトルでは、バトルの最中にも謎が生まれ闘いながらそれを解いていくという展開によりバトルの迫力や熱量を高めているなど、ミステリの魅力や精神をしっかりと宿してそれを物語の中で効果的に活かしている作品でもあるので、やはり詠坂作品ということもあって好き嫌いは激しく分かれそうではあるものの、好きな人であればこのバトルより特殊能力の解明により力を注いだ異色異能バトルミステリを偏愛的に堪能できるのではないでしょうか。


 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


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  > No.1083 「君待秋ラは透きとおる」

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  > No.0595 「インサート・コイン(ズ)」
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  > No.0372 「ドゥルシネーアの休日」


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