『Blue(ブルー)』 葉真中顕 > 「このミス」完全読破 No.1078
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1078
『Blue(ブルー)』 葉真中顕
「このミス」2020年版 : 39位
受賞(候補) : (「山田風太郎賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 14位
「ミステリが読みたい!」 20位
読了日 : 2019年8月30日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年4月>
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平成15年の12月、青梅にある住宅で、家族五人の死体が発見された通称“青梅事件”が発生。
一家を殺害したと思われる犯人は、この家に引きこもっていた31歳の次女・夏希であることが分かったものの、その夏希は父・母・姉・姉の息子の家族四人を殺害した直後に、薬物の過剰摂取が原因の心臓麻痺により入浴したまま死亡。
この事件には指紋や髪の毛などから夏希の他に最低で一人以上の共犯者がいることが確実視されていながら、その共犯者の身元も足取りもわからぬまま半年が経過し、捜査が停滞し続けている中、“夏希は引きこもっていなかった(実家に住んでいなかった)”というこれまでの捜査の前提条件の一つが崩れるような新情報が入って来て....。
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この事件の謎を解き明かすため、担当する刑事が夏希とその息子・ブルーの過去を探っていくのが1部の内容で、2部に入ると平成最後の月である平成31年4月に起きた団地の空き部屋で身元不明の若い男女の惨殺死体が発見された事件の捜査が中心となり、1部とは別の刑事が真相へと迫るべく奮闘していきます。
これらの捜査は、前者は容疑者の過去、後者は被害者の過去を掘り下げていくことよって事件解決に導く糸口を少しずつ手繰り寄せていくのですが、そこから浮かび上がって来るのは児童虐待、子供の貧困、無国籍児、モンスターペアレント、外国人の低賃金労働などのリアルな現状で、そんな格差社会から生み出された深刻な闇を照らすことにより壮絶な人間ドラマが目の当たりにされていくのですね。
そして、これらの事件の合間には“平成という時代が始まった日に生まれ平成が終わった日に死んだ男”について語られていきますし、青梅事件の現場にエンドレスで流れていたSMAPの『世界に一つだけの花』を始めとしたその当時に流行ったJ-POPが様々な場面で象徴的に使われるなど、本作は平成30年間の文化、風俗、それに社会問題を俯瞰するというテーマがあって、それにより本作ならでは&その時代だからこその魅力が生み出されていたように思います。
格差社会を描いた社会派事件サスペンスというのはNo.643「ロスト・ケア」やNo.792「絶叫」など葉真中作品の中でも王道路線なため面白さや読み応えは間違いないので、平成の記憶がまだ強く残っていて令和慣れする前に読んでおくべき作品なのではないでしょうか。
個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “葉真中顕 ”関連記事 】
> No.1078 「Blue(ブルー)」
> No.1068 「W県警の悲劇」
> No.1048 「凍てつく太陽」(後日更新予定)
> No.0922 「コクーン」(後日更新予定)
> No.0913 「ブラック・ドッグ」(後日更新予定)
> No.0792 「絶叫」
> No.0643 「ロスト・ケア」
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