『希望の糸』 東野圭吾 > 「このミス」完全読破 No.1079
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1079
『希望の糸』 東野圭吾
「このミス」2020年版 : 29位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 9位
読了日 : 2019年9月3日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年7月>
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『卒業』、『眠りの森』、『どちらかが彼女を殺した』、『悪意』、『私が彼を殺した』、『嘘をもうひとつだけ』、No.53「赤い指」、No.236「新参者」、No.437 「麒麟の翼」、No.690「祈りの幕が下りる時」に続く“加賀恭一郎シリーズ ”の11作目です。
このシリーズは、シリーズ名にもなっている刑事の加賀恭一郎がもちろん主人公なのですが、しかし本作での恭一郎は脇役的な立ち位置となっています。
その代わりとして物語の中心となるのが、(これまでのシリーズ作品にも登場していた)恭一郎の従弟である刑事の松宮脩平なので、シリーズの続編というよりはスピンオフや番外編や姉妹編といった感じなため、文庫化の際には“シリーズ11作目”とは書かれていないかもしれませんね(単行本にも“11作目”やシリーズ名などは書かれていません)。
なお、そんなスピンオフ的な作品ですし、シリーズ前作も本作も単行本発売の際にシリーズ作品(加賀恭一郎関連作品)であることを(表紙や帯に記すなどして)前面に出していなかったことからも分かるように、過去のシリーズ作品を未読な状態でいきなり本作から読んでも問題なく楽しめると思います。
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自由が丘の喫茶店で店主の女性が背中にナイフを刺され死んでいるのが発見され、松宮を始めとした刑事による捜査が始まったものの、被害者が誰からも恨まれたり憎まれたりしなさそうな性格だったこともあって、なかなか有力な容疑者を見つけ出せず。
そんな中で被害者と親しかった人物として浮上してきた汐見行信は、16年前に起きた新潟県中越地震で小学生になる2人の子供を亡くし、その直後に授かった娘の萌奈を亡き姉兄の分まで大事に育ててきたものの、妻を病気で亡くしてからはギクシャクした父娘関係に。
さらに松宮自身も、幼き頃に死んだと聞かされてきた父親が実は生きているらしく、しかも余命わずかであるとの連絡を受けるなど、捜査する側もされる側も“親子の繋がり”を強く切実に感じられるような人間ドラマが次第に浮かび上がっていくのですね。
そんなドラマ性は、やはり著者が東野圭吾なだけあって読んでいて心を締めつけられたり感動させられたりと極上の読み応えなのですが、そういった人間(親子)ドラマが事件の構図や推理や真相と絶妙なほどに関わってきてどちらの要素をも熱く盛り上げていくのは(毎度のことながら)さすがの一言でした。
ただ今回は、鋭い推理に定評のある恭一郎ではなく(人間ドラマ部分の重要な一つを担っている)松宮が主人公であることからも分かるように、捜査ミステリ(サスペンス)よりも人間ドラマの方に熱を入れて書かれているようなので、捜査ミステリ(サスペンス)部分のみに期待して読んでしまうと手応えを感じられないかもしれません。
とはいっても捜査ミステリ(サスペンス)を中心に読んだとしても平均レベルの高さは実感できると思うので面白さを十二分に堪能出来ると思いますし、今回の恭一郎は脇役とはいえ大きな見せ場がちゃんとあるので加賀恭一郎好きの人も読み逃せない作品であることは間違いないでしょう。
個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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