『いけない』 道尾秀介 > 「このミス」完全読破 No.1081
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1081
『いけない』 道尾秀介
「このミス」2020年版 : 29位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 6位
「ミステリが読みたい!」 7位
読了日 : 2019年9月12日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年7月>
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「弓投げの崖を見てはいけない」「その話を聞かせてはいけない」「絵の謎に気づいてはいけない」「街の平和を信じてはいけない」から成る連作集です。
一章の「弓投げの崖を見てはいけない」は、2010年に発売された(1970年代生まれのミステリ作家が競作した蝦蟇倉市という架空の街が舞台の)アンソロジー作品No.312「蝦蟇倉市事件 1」(文庫化の際に『晴れた日は謎を追って がまくら市事件』に改題)にも収録されていたのですが、結末がはっきりとは明かされないリドル・ストーリーのような構成や、巻末の著者コメント欄に書かれた“本文をよぉく読んだうえで(アンソロジー巻頭に掲載の蝦蟇倉市の)地図を見ると答えは一つに絞られるかもしれない”といった感じのコメント(ヒント付き)によって再読&読者自身による推理を促すという仕掛けなどにより、刊行直後には結構話題になりました。
そして、"最後に一つの絵や写真を見ることにより真相が浮かび上がって来る"という同じ形式で書かれた作品を連ねることにより本作が生まれたのですね。
ちなみに、アンソロジー版「弓投げの~」に比べると、『いけない』版「弓投げの~」は推理の難易度がかなり低くなるように加筆修正されているので、"難易度の高い謎(推理)に挑戦したい!!"という方は、まずはアンソロジー版「弓投げの~」の方から読んで推理してみることをお薦めします。
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というわけで二・三章も、最後のページにある写真を見た途端に隠された真相を目の当たりにし、思わず体をのけ反り目をひん剥いてしまうほどの驚きを味わえるのですが、二章と三章とでは驚きの種類がまた異なり、後味というか余韻も違っていますし、それは一章・終章を含めてもそうなので、様々なタイプの驚きを次々と体験出来てしまうのです。
そしてページが少ない終章でも、もちろん最後の写真に驚かされてしまうものの、ただ連作の定番でもある“それまでの章をまとめ上げた総集編”的な内容でもありまして、一・二・三章ではっきりとは書かれていなかった真相がここで分かるので、一・二・三章を読んであんまり意味が分からなかったという方はすぐにネット等でネタバレを調べたりせずにとりあえず終章まで読んでみた方が良いかもしれませんね。
ただそれでも真相に到る過程(伏線等)は読者自身が推理しなければならず、しかも読者に想像の余地を与える作りになっていますし、そうやって読者が知り得た真相は“闇に葬られそうな犯罪”なので何とも言えない苦い後味が残るなど、鮮やかなどんでん返しやスッキリとした読み味が待ち受けているタイプではないので、ベストセラーだからといって気軽に手を出してしまった(特に普段は本格ミステリ作品など読まないような)人だとモヤモヤしたり納得できなかったりどこが面白いのかすら全く分からない可能性もありそうです。
とはいえ、著者の企みを理解し楽しめる人であれば、(後味の悪さやスッキリしない感も含めて)本作でしか味わうことのできないミステリ的刺激を受けつつ為されるがままに翻弄され驚かされてしまったうえで、そこから改めて推理したり考察したりネタバレを探すなど読後にも本作から湧き出る魅力を心底堪能できるのではないでしょうか。
個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0117 「カラスの親指」
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> No.0058 「片眼の猿」
> No.0049 「シャドウ」
> No.0041 「向日葵の咲かない夏」
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