『或るエジプト十字架の謎』 柄刀一 > 「このミス」完全読破 No.1082
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1082
『或るエジプト十字架の謎』 柄刀一
「このミス」2020年版 : 23位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 6位
「ミステリが読みたい!」 10位
読了日 : 2019年9月16日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年5月>
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『OZの迷宮』、『火の神の熱い夏』、『fの魔弾』、No.74「密室キングダム」、『ペガサスと一角獣薬局』に続く“南美希風シリーズ”の6作目です。
主人公はシリーズ名にもなっている南美希風(男)で、職業はカメラマンであるものの、これまで遭遇した数々の難事件をそのたぐいまれなる推理力で解決に導いてきた実績から、現在は民間から登用された北海道警察の特別捜査官として事件現場に臨場出来る立場になっています。
そして今回は、美希風の心臓手術を受け持った恩人医師の娘でありアメリカの法医学者でもあるエリザベス・キッドリッジが、東京で行われる世界法医学交流シンポジウムにアメリカ代表として出席するために来日し、美希風は日本でのガイド役を引き受けたのですが、このシンポジウムでは都内で検視事案が発生した場合に他国の検視官や法医学者も現場に出向いて検視活動を実地で体験するという目玉企画があって、この企画によりエリザベスが出向くことになった事件に美希風も引っ張り出されることになるのですね。
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というわけで本作は、「或るローマ帽子の謎」「或るフランス白粉の謎」「或るオランダ靴の謎」「或るエジプト十字架の謎」の4篇から成っています。
それぞれの話では、美希風とエリザベスの2人が警察の協力も得つつ殺人事件の謎に挑んでいきまして、とはいえエリザベスは特に推理したり有力なアドバイスをするわけではないので、探偵二人組でもワトソン役でもないのですが、ただ法医学者だけあって検視関係の知識は豊富ですし、それに日本語を男言葉で憶えてしまったことにより会話にコミカルさが加わるため、探偵役である美希風とは息のあったやり取りを繰り広げていくのです。
そしてもう一つの特徴としては、各話のタイトルを見てわかるようにエラリー・クイーンの“国名シリーズ”をオマージュしていることで、“読者への挑戦”こそないものの、それぞれ帽子・白粉・靴・十字架といった事件現場に遺された特徴的なアイテム(またはそれを模した死体)が象徴的に登場して、それらによって過剰で異常でインパクトの強い殺人現場が演出されています。
そんな謎めいた事件に対して、美希風は論理的な推理によって真相に向かい迫っていきますし、ケレン味に溢れた事件現場が(犯人によって)どうして作られたのかを中心とした謎解きにより、衝撃的な真相と、(ド派手な事件現場とは対照的な)真犯人の現実的な犯行理由が明かされるのですね。
そういった本格ミステリの王道的な作品なので、(エリザベスのキャラクターや役割には賛否両論ありそうですが)本格ミステリ好きな方であれば巧みな技(推理劇)をじっくりと堪能できるのではないでしょうか(ちなみにシリーズものとはいえ本作から読んでも問題なく楽しむことが出来ると思います)。
個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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