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2019年8月10日 (土)

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』 青柳碧人 > 「このミス」完全読破 No.1076

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1076

 『むかしむかしあるところに、死体がありました。』 青柳碧人

   「このミス」2020年版 : 33位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 7位
              「ミステリが読みたい!」 8位
              「本格ミステリ・ベスト10」 9位

   読了日 : 2019年8月8日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2019年4月>

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 「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室龍宮城」「絶海の鬼ケ島」から成る短篇集です。

 各話のタイトル、それに単行本自体のタイトルや表紙絵を見れば分かるように、日本の昔ばなし(おとぎ話)を共通テーマとした作品集でして、取り上げられている昔話は各タイトルから容易に想像出来そうですが、一応書いておきますと「一寸法師」「花咲か爺」「鶴の恩返し」「浦島太郎」「桃太郎」が原典(元ネタ)となっています。

 いずれも誰もが知っている代表的な昔ばなしなため、改めて原典を読んでおく必要はないとはいえ、“どこまでが原典通りでどこからがオリジナルなのか”に注目しながら読むのも楽しみ所の一つだと思うので、曖昧な記憶しか残っていないというような方は各話の原典のあらすじだけでも軽く目を通してから本作を読み始めるのもいいのかもしれません(もちろん曖昧な記憶のままでも問題なく楽しめますが)。

 ちなみに、連作的な要素がわずかながらあって、トリックに関わってきたりもするので、気になる話から読むよりは、「一寸法師の~」から順に読んでいくことをお薦めします。

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 そんな本作の一番の特徴といえば、やはり“日本の昔ばなしと本格ミステリとの融合”なのですが、この本格ミステリ部分というのが、ミステリ要素を申し訳程度に入れてみたりミステリっぽい捻りをちょっと加えただけだったりという軽いものではなく、各話で必ず殺人事件が起きますし、アリバイや倒叙や密室など定番的なガジェットが用いられるなど、なかなか本格的なミステリ演出となっています。

 それに、浦島太郎が龍宮城で起きた密室殺人(魚?)事件の謎を推理したり、鬼ケ島が外界から隔離された連続殺人(鬼?)事件の舞台となったり、昔ばなしならではの小道具がトリックに使われるなど、昔ばなしと本格ミステリ要素とが見事なまでに絡み合っているため、特殊設定ミステリとしても素晴らしい出来となっていますし、原典の内容を尊重しつつストーリー的にもミステリ的にも絶妙な匙加減で手を加えているので、パロディ的な面白さも生み出されていました。

 (平易な文章で書かれた子供向けの内容を想像してしまいそうな)単行本のタイトルや表紙絵の印象とは違って、本格ミステリとしての読み応えがあり、ブラックユーモアが効いていて、文章もライトな時代小説といった感じであるなど、大人(特にミステリ好き)が童心に帰りつつミステリ的な刺激を受けながら楽しめるような作品なので、まあ異色作なので好みは分かれるかもしれないものの、読めば別の昔ばなしを原典とした続編の発売を待ち遠しくなるくらいにこの遊び心に満ちたミステリ昔ばなしを堪能出来るのではないでしょうか(現在は“西洋昔ばなし×本格ミステリ”をテーマに雑誌連載しているようですね)。


 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

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