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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1060
『木曜日の子ども』 重松清
「このミス」2020年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2019年3月26日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年1月>
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四十歳を過ぎるまで独り身だったものの、同い年で離婚歴のある香奈恵と結婚した清水は、連れ子となる中学生の晴彦がいじめを受けていたこともあり、結婚を機に旭ヶ丘ニュータウンへ引っ越すことに。
この旭ヶ丘は、七年前に中学校で生徒の一人が給食に毒薬を混入しクラスメイト9人が死亡した無差別毒殺事件が起きたことで、全国的に名の知れた町に。
そんな旭ヶ丘に越して来て早々、晴彦が毒殺事件の犯人である上田祐太郎と面影が似すぎているらしいことが分かったのに続き、街中では上田が社会復帰しているとの噂が流れ、さらには七年前の事件を思い出させるような事件が起き始めて....。
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といったあらすじからすると、前の学校では壮絶ないじめに合い、転校先でもかつて世間を賑わせた殺人犯に似ていると噂になるなどいきなり不穏な状況に身を置くことになった中学生の晴彦が主人公の青春サスペンス劇が繰り広げられそうに思いますが、実際の主人公は晴彦ではなくその義父(清水)の方となっています。
そのため、本作で最も焦点が当てられているテーマはいじめ問題や少年犯罪ではなく、家族、特に父親に関する"(父親として)どうあるべきか"といった命題が強く描かれていまして、いきなり中学生の父親となりその息子との適切な距離を計るのに悩んでいた主人公が、事件や騒動が身近に起きることにより、“息子をどこまで信じることが出来るのか”といった切実な苦悩を抱えるまで追い込まれていくことに。
しかも、物語が進んでいくにつれて、町中を騒がす事件だったはずが主人公に狙いを定めるかのような展開になっていきますし、そこで主人公に対して時に鋭く時に重く突き付けてくるのは“父親としての資格”を問い質す言葉の暴力であるため、人間の心に向けて鋭利な刃物で何度も刺してくるかのような緊迫感が半端ない人間ドラマが繰り広げられていくのです。
とはいえ、主人公に対する攻撃は見方によっては自称天才による言葉でマウントを取り続ける屁理屈問答のようでもあり、前半とは違って後半では事件サスペンス的展開から主人公への精神攻撃中心へと移っていくので、エンタメ要素の強い事件サスペンス(ミステリ)を期待してしまうと特に後半の流れには手応えを感じられないかもしれません(あとは読者が“父親”であるかどうかでも本作に対する感想が大きく変わりそうな気もします)。
ただ、とても重い内容ながらスピード感を伴いつつグイグイと惹きつけられて読んでしまうほどの物語性や筆致はさすがの一言ですし、それに女性作家による“母親の苦悩”を描いたエンタメミステリ系作品は近年増えているのに対して“父親の苦悩”を描いた作品はあまりなく、そういった意味でも本作はかなり希少で貴重なテーマを扱っていると思うので、特に主人公と同世代の“(思春期の子供を持つ)父親”の方に強くお薦めしたい作品ですね。
個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0132 「疾走」
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