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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1068
『W県警の悲劇』 葉真中顕
「このミス」2020年版 : 18位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2019年5月28日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2019年1月>
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W県警は、男尊女卑がまかり通っているなど日本中の県警の中でも特に旧態依然としていることで知られていて、県警を仕切っている“円卓会議”と呼ばれる幹部会合も、現状維持を旨とし前例にない組織改革などをとにかく嫌う事なかれ主義の集まり。
そんなW県警で女性警官として史上初めて警視まで登りつめた松永菜穂子は、男尊女卑的な体質を改革するのを自分の使命とし、そのために警視正へ昇進して円卓会議の正規メンバーになるべく努力していて....。
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というわけで本作は、「洞の奥」「交換日記」「ガサ入れの朝」「私の戦い」「破戒」「消えた少女」から成る連作集です。
各話ごとに主人公が変わることもあって、連作とはいえ全編を通して深く繋がっているわけではないものの、主人公はW県警の女性警官という共通点があり、各主人公が間接的に関わっていたりもします。
そんな女性警官たちがそれぞれ担当することになる事件に挑んでいくのですが、捜査や取り調べの場面は事件自体がかなり謎めいているため先の読めないスリル満点な展開が繰り広げられ、女性という(W県警では特に)弱い立場にいながら奮闘する姿も描かれるなど、警察小説としての魅力が刺激的なほどに感じられました。
そして本作の一番の特徴といえば、各話の終盤で読者をアッと驚かせるような仕掛けが炸裂することでして、そこに至るまでの物語だけでも充分に面白く読んでいたのに、驚きの真相が明かされることによってさらに身体が震えるほどの衝撃的なカタルシスを味わわされてしまいますし、注意深く読んでいても見事に騙されたりドキッとさせられてしまうくらいに捻りが効き趣向が凝らされた仕掛けとなっているのですね。
とはいえ、中にはさすがに伏線が強引すぎるのではないかと思うような箇所もあったりして、そんなところからも現実的な警察サスペンスや人間ドラマを描くタイプなではないことがわかるため、そういったリアルさを期待して読んでしまうと人工的で荒唐無稽な物語に見えて話に入っていき辛くなってしまうかもしれません。
ただその分エンタメ要素全開でとにかく読者を驚かせ楽しませようとする意気込みが強く伝わってきますし、社会派サスペンスを得意とする著者からすると軽く読める系の作品に思われそうですが中身の方は警察小説としても本格ミステリ作品としても(遊び心がたっぷりと詰まっていながら)一級品の読み応えがあります。
なので、葉真中作品好きな人やサスペンス系作品が好きな人はもちろんのこと当然ですが、これまでの葉真中作品を(ジャンル的に)敬遠していた本格ミステリ好きな人にも強くお薦めしたくなる作品ですし、読めば単行本表紙に描かれた女性警官二人と同じようなニヤリとした笑顔を思わず作ってしまうほどのミステリ的快感を堪能できるのではないでしょうか。
個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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