『千年図書館』 北山猛邦 > 「このミス」完全読破 No.1056
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1056
『千年図書館』 北山猛邦
「このミス」2020年版 : 97位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2019年3月1日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : ノベルス <2019年1月>
千年図書館 (講談社ノベルス) 北山猛邦 講談社 2019-1-11 |
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北村猛邦といえば(“城シリーズ”や“少年検閲官シリーズ”など)長篇や連作を主に手掛ける作家のイメージが強いのではないかと思うのですが(違っていたらスイマセン)、「このミス」初ランクイン作品は意外にもノンシリーズの短篇集No.0451「私たちが星座を盗んだ理由」でした。
この作品はノンシリーズとはいえ“ラストに驚きの捻りが加えられている”という共通したテーマがありまして、本作はそんな短篇集としてのテーマを引き継いだ作品となっています。
とはいえ、『私たちが~』とストーリーや登場人物が繋がっていたりネタバレがあったりするわけではないので、シリーズ続編というよりは姉妹編といった感じでしょうか(なのでどちらから先に読んでも問題なく楽しむことが出来ます)。
ただ、本作をパラパラッとめくり見すると重要部分のネタバレを目にしてしまう可能性が高いので、読み始める前や書店等で手に取った際にはくれぐれもご注意を。
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というわけで本作は、「見返り谷から呼ぶ声」「千年図書館」「今夜の月はしましま模様?」「終末硝子」「さかさま少女のためのピアノソナタ」の5篇を収録。
「見返り谷から呼ぶ声」は、クラスから孤立した少女が禁忌の谷に興味を示し始めたのをきっかけに起きる騒動が描かれるのですが、フェアプレーを心掛けたのであろう箇所がちょっと分かりやす過ぎたように感じたものの、気付かなければ最後に度肝を抜かれるほどの驚きを味わえること間違いないですし、途中で真相に気付いたとしてもこの切なさ溢れる青春物語を堪能するのに大きなマイナスにはならないでしょう。
「千年図書館」は、村に凶兆が起きると村の若者たちの中から司書を選び出し、その司書を“西の果ての島にある人の寄り付かない図書館”に捧げるというファンタジー感溢れる物語で、ラストページを目にした瞬間に受ける衝撃はインパクト絶大ですし、『私たちが~』を先に読んでいる人なら“今回はこうきたか~”と思わずニヤリとしてしまうのでは。
(読み終えた人向け > 最後のページを見ても意味が分からなかったという方はこちらをご覧ください * 未読の方がリンク先を見るとネタバレになってしまいます)
「今夜の月はしましま模様?」は、月面に突き刺さった巨大結晶状物体がそのまま地表の岩石をしましま模様に削りながら移動するという、北山作品とすると意外なほどにSF的な導入から始まる物語で、その後も驚きのラストに到るまでSF要素全開で進んでいくので、ミステリ好きな人以上にSF好きの人に注目してほしい作品です。
「終末硝子」は、主人公が病気療養のため十年ぶりに故郷(イングランド東部の村)に帰ると、そこでは元海軍将校の“船長さん”が死者を塔の上に葬る“塔葬”を始めていたという話ですが、不穏だったり謎めいていた部分が最後にきっちりと回収される技がミステリ的にも物語的にもお見事で、個人的にはこの話が一番驚愕を誘われました。
「さかさま少女のためのピアノソナタ」は、“絶対に弾いてはならない”と書かれている呪われた楽譜を手に入れた学生の話で、不思議な現象と青春物語と発想の転換とが絶妙に掛け合わされていて、他の話と比較するとページ数は少ないながら一番(視覚的な)印象が強く残る作品でしたね。
今回の収録作も、ラストで世界観が一変するようなどんでん返しが炸裂するというよりは、例えるならNo.140「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信やNo.912「許されようとは思いません」芦沢央などと同じような、ラストに捻りや強烈なオチを加えて驚きを生み出すタイプの作品が多いので、きれいに騙されてしまうどんでん返し系を期待してしまうと手応えを感じられないかもしれません。
ただ期待の掛け方さえ間違えなければ、物語的な魅力とミステリ的な驚きを同時に味わえるミステリ短篇集の見本とすべき(と言っても過言でないほどの)面白さを心から楽しめるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0799 「オルゴーリェンヌ」
> No.0758 「少年検閲官」
> No.0688 「猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条」
> No.0530 「猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数」
> No.0451 「私たちが星座を盗んだ理由」
> No.0315 「蝦蟇倉市事件 2」
> No.0141 「踊るジョーカー 名探偵音野順の事件簿」
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