『お前の彼女は二階で茹で死に』 白井智之 > 「このミス」完全読破 No.1055
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1055
『お前の彼女は二階で茹で死に』 白井智之
「このミス」2020年版 : 42位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 21位
読了日 : 2019年2月20日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2018年12月>
お前の彼女は二階で茹で死に 白井智之 実業之日本社 2018-12-25 |
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「ミミズ人間はタンクで共食い」「アブラ人間は樹海で生け捕り」「トカゲ人間は旅館で首無し」「水腫れの猿は皆殺し」「後始末」から成る連作集です。
主人公は刑事のヒコボシで、捜査を命じられたりたまたま出くわした異色で異常な殺人事件の謎に挑んでいくことに。
ただこのヒコボシは、過去の因縁により複数の人間に対して心の底から怨みを抱いているのですが、今回捜査することになるそれぞれの事件には偶然(必然?)その怨むべき人物たちが関わっているため、ヒコボシは事件の真相を暴くのはもちろん、恨みのターゲットに大ダメージを与えるような事件解決へと強引に導こうともしていくのです。
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というわけで本作は昨今流行りの多重解決ミステリ作品でして、ただ流行りとはいえ手掛けるには確かな本格ミステリ技量が必要なため(叙述ミステリ等とは違って)誰でも気軽に手を出せる類のジャンルではないものの、そこはデビューから4年で早くも年末恒例ミステリランキングの常連となっている白井智之なので、アリバイ・密室・孤立した山荘(旅館)など定番のガジェットを用いつつレベルの高い多重解決推理劇を展開していきます。
しかも、各章の冒頭では、とある人物が必ず切羽詰まった状況での二択や三択に迫られる場面があり(どれを選択したかはこの時点で読者に明かされず)、そこでどの選択肢を選んだのかによって真相(推理)も変わってくるという、多重解決ミステリの面白さを最大限に活かすような刺激的で心憎い演出もあるのです。
ただ、これを書いているのはあくまで白井智之なので、気色悪すぎる描写や酷過ぎる行動思考が遠慮なくぶち込まれたエログロ要素が全編に渡って侵食していますし、冒頭に登場する人物が選択肢に悩んだ結果やることというのは卑劣な性犯罪ですし、そもそも刑事である主人公自身が自宅の二階に少女を監禁・虐待しているような極悪人だったりと、まあ過去作に負けず劣らずの倫理観が崩壊しまくった鬼畜エログロ物語となっているのですね。
さらには、“四人に一人ほどの割合で身体がミミズそっくりになる遺伝子疾患を持つ人間(通称・ミミズ)が生まれる”という白井作品ならではの気持ち悪い特殊設定があるなど、やはり読む人(そして好む人)をかなり限定するようなマニア向け小説となっていました。
とはいえ、そんなエログロ要素や特殊設定が見事なほどに本格ミステリ要素と融合しているのは本当に奇蹟的なほどの出来栄えで、常人には決して想像できないような作品世界や本格ミステリ的演出を味わえるのは間違いなく、しかも平山夢明作品を思わすような鬼畜ノワール度が増していたりとこれまでの白井作品と比べても進化(深化)が感じられるなどの読みどころもあるので、この作風を許容できる人であれば今回も期待を裏切らない唯一無二の白井ミステリの魅力を脳髄まで震わせながら堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0882 「東京結合人間」(後日更新予定)
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