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2019年2月 8日 (金)

『夜汐』 東山彰良 > 「このミス」完全読破 No.1054


「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1054

 『夜汐』 東山彰良

   「このミス」2020年版 : 投票数0

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2019年2月2日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2018年11月>


夜汐

東山彰良

講談社 2018-11-28

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 時は文久三年、やくざ者の亀吉は、自分が(曲三親分に内緒で)開催した花会をわざと賭場荒らしに襲わせ、大金をせしめることに成功。

 これを裏で操っていたのは、曲三親分と敵対している祐天仙之助の子分であり、亀吉とは同郷で旧知の仲である蓮八で、二人はこの手柄により、十年前に吉原に売られた亀吉の姉・八穂を身請けすることに。

 亀吉と八穂は名前を変えて高尾山の麓にある小さな一膳飯屋を引き継ぎ、蓮八は祐天親分と共に浪士組として京都に上洛したものの、二人には曲三親分が差し向けた殺し屋・夜汐が迫っていて....。

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 というわけで本作は、東山彰良の初となる日本を舞台にした時代歴史小説となっています。

 序盤は江戸を舞台にヤクザや殺し屋による騒動が描かれ、中盤に入り主な舞台を京都へ移すと(歴史物としては超人気ブランドである)新選組が登場し、近藤勇・土方歳三・沖田総司といった人気隊士もガッツリと絡んできますし、終盤では蓮八による身も心もボロボロになりながらの逃走劇が描かれてと、東山作品として読むと意外に思ってしまうほどに直球の時代小説として仕上がっていました。

 とはいえ、主人公である蓮八がひょうひょうとしたキャラクターということもあって(終始殺伐とした内容でありながら)作品全体の雰囲気はむしろ軽快ですし、ストーリーもシンプルなほどに進んでいくので、時代小説を読み慣れていない人でも読みやすくて気軽に楽しめるのでは。

 ただその分、No.0689「ブラックライダー」No.0829「流」のようなスケールが半端ない世界観や圧倒されるほどの描写(と同様のもの)を期待してしまうと手応えを感じられないかもしれませんが、強い信念など持たずに流れに任せて生きてきた主人公が愛する女性のために生き残る可能性がわずかな逃亡劇を決行する悲壮感・焦燥感や、死神を思わすような殺し屋との絡みにより浮かび上がってくる真理的な死生観などから、ヒリヒリとした空気をまとう刺激だったり、絶望的な状況の中から希望の光が照らされるドラマ性など、東山作品ならではの身に染みる読み味が芯から感じられる作品でもありました。

 それに、(やはり新選組が出てくるだけでもう面白さが保障されているくらいに)エンタメ系時代小説としての魅力を肩肘張らずに堪能出来ると思ので、ロードノベルやノワール的な作風で好みが分かれてしまうかもしれないものの、(広義の)エンタメ系ミステリ好きな人にも時代小説好きな人にもお薦めの作品です。


> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “東山彰良” 関連記事 】

  > No.1054 「夜汐」
  > No.0984 「僕が殺した人と僕を殺した人」(後日更新予定)
  > No.0889 「罪の終わり」
  > No.0829 「流」

  > No.0689 「ブラックライダー」
  > No.0545 「ミスター・グッド・ドクターをさがして」
  > No.0496 「ファミリー・レストラン」
  > No.0283 「ライフ・ゴーズ・オン」
  > No.0176 「ジョニー・ザ・ラビット」


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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

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