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2019年1月31日 (木)

『本と鍵の季節』 米澤穂信 > 「このミス」完全読破 No.1050


「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1050

 『本と鍵の季節』 米澤穂信

   「このミス」2020年版 : 9位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 12位
              「本格ミステリ・ベスト10」 14位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 18位

   読了日 : 2018年12月26日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2018年12月>


本と鍵の季節 (単行本)

米澤穂信

集英社 2018-12-14

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 堀川次郎は、学校で図書委員を務める高校二年生。

 (図書室の利用者がほとんどいないのをいいことに)いつも図書室で雑談やゲームで盛り上がっていた三年生が受験準備のため委員を引退すると、図書室は火が消えたかのように静かになり、堀川は同級生の松倉詩門と共に静まり返った図書室で委員の仕事をしたり時間をつぶしたりする委員生活を送ることに。

 そんなある日、図書委員を引退した三年生の一人である浦上麻里先輩が図書室を訪れ、(亡くなった祖父が遺した)ダイヤル式の鍵が掛かったままの金庫を開けてほしい、と堀川と松倉に頼んできて.....。

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 というわけで本作は、「913」「ロックオンロッカー」「金曜に彼は何をしたのか」「ない本」「昔話を聞かせておくれよ」「友よ知るなかれ」から成る連作集です。

 最近は様々なタイプの作品で常に高評価を受けている著者にとって最も得意なジャンルであり原点でもある学園青春ミステリですが(とはいえ校外の場面が多いので正確には“学園”ではないかも?)、主人公二人は図書委員とはいえそれほど本が好きでも詳しくもなく、目を惹くような特技や決め台詞を持っているわけでもなく、しかも男二人なので、派手な設定があたりまえな学園青春ミステリとしては少々地味な印象となっています。

 ただその分(と言っていいのか分かりませんが)、暗号にアリバイ探しに文書の謎など章ごとにミステリのタイプが違ったり、まず基本となる大きな謎があって、それを推理していく過程で新たな謎が次々と生み出されていき、主人公が真相への糸口を掴んでも読者的にはそれすら謎となり、そんないくつもの謎が膨れ上がってもう限界だというまさにその瞬間に驚くべき真相が明かされたりと、ミステリ作品としてのテクニックも構成も演出も素晴らしいほどの読み応えとなっているのですね。

 そして最初は地味に思えた主人公二人も、相談事を持ち掛けられやすくて何事も素直に受け止める堀川と、逆に何事にも疑り深くて鋭い推理力を見せる松倉という、性格的にも探偵役的にもタイプの異なる二人が揃っているからこその推理劇が繰り広げられていきますし、そんな二人の関係性も連作として進んでいくことにより(BL的な意味ではなく)変化していき少々ビターな読み味が加わってくるなど、ミステリとしても青春物語としても“この主人公二人だからこそ”の魅力があったように思います。

 というわけで、派手さや青春の輝き的なキラキラした雰囲気はなく、恋愛要素もほとんどないので、そういった学園青春ミステリの定番的な面白さを期待してしまうと手応え感じられないかもしれませんが、それゆえに(学園青春ミステリ系作品にそれほど興味がない人でも)本格ミステリ小説として十分に惹き込まれ楽しめる作品となっていて、それに加えて青春物語としてのほろ苦い友情譚も一級品の出来栄えなので、著者ならではの“渋味の効いた青春本格ミステリ”を多くの人が堪能できるのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “米澤穂信” 関連記事 】

  > No.1123 「巴里マカロンの謎」
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  > No.0250 「秋期限定栗きんとん事件」
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