『宝島』 真藤順丈 > 「このミス」完全読破 No.1037
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1037
『宝島』 真藤順丈
「このミス」2019年版 : 5位
受賞(候補) : 「直木三十五賞」 受賞
「山田風太郎賞」 受賞
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 7位
「ミステリが読みたい!」 14位
読了日 : 2018年9月16日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2018年6月>
宝島 真藤順丈 講談社 2018-06-21 |
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米軍の倉庫や基地に侵入しては様々な物資を奪い、食料や衣類、医薬品など日常生活に欠かせない戦果を身内だけでなく地元じゅうに配ってまわることから、コザで一番の“戦果アギヤー”として英雄視されている青年・オンちゃん。
そんなオンちゃんを慕い共に行動しているのが、親友で弟分のグスク、実の弟のレイ、そして恋人のヤマコの三人。
ある日、他の地域の戦果アギヤーを助っ人にして極東最大の米軍基地、キャンプ・カデナでの強奪計画という大勝負に出るも、なぜかすぐに米兵に見つかって追い回される羽目になり、グスクはなんとか逃げ切り金網の外にいたヤマコに助けられ、逃げ遅れたレイは警察に捕まったものの、オンちゃんだけが行方不明になっていて....。
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といった通称・嘉手納戦果アギヤー強奪未遂事件から始まる本作は、戦後間もない1952年から本土復帰(アメリカから日本に返還)となった1972年までの沖縄を舞台としています。
この時代の沖縄というのは、日本で唯一戦場となった戦争の傷跡がまだまだ深く残り、戦後もアメリカの支配が続いていたために、先祖が眠る地を強制的に追い出されたり、アメリカ軍人による犯罪に泣き寝入りしなければならなかったり、本土復帰に希望と絶望を抱いたりと、まさに激動の時代だったわけですが、一般島民の目線から史実や実在の人物を交えて描かれていくので、沖縄の基地問題などについて身を持って知ることが出来ると思います。
そんな激動の沖縄において繰り広げられていくグスク、レイ、ヤマコの三人を中心とした物語は、激流ともいえる時代の波にも負けないほどの力強さや衝動が常に作中から感じられ、警官・教師・ごろつきと三者三様に道を切り開いて進んでいくそれぞれのストーリーも熱が冷めぬほどに生き生きとしていますし、“英雄の失踪”に端を発する胸に秘めた想いを三人が共有していることからくる青春物語としての読み応えも圧巻です。
そして全体的には非エンタメ系文芸小説的な雰囲気があるのですが、サスペンス・バイオレンス・警察・探偵・スパイ・テロ・クライムノベル・ノワールなど様々なエンタメ要素で演出され、“英雄の失踪”の謎を追うミステリ的な展開が一貫して軸となっているなど、エンタメ要素が物語の中で血や骨となってたぎりながら息づいてもいました。
というわけで本作は、No.632「墓頭」や『夜の淵をひと廻り』などが(自分も含めた)一部の人に高く評価されながら一般的にみるとそこまで弾けきらなかった(ように見える)著者による、ようやく限界突破をぶちかまして生み出された誰もが認める傑作だと思いますし、沖縄の社会問題を扱いつつも物語としての面白さやエンタメとしての面白さが贅沢なほどに詰め込まれているので、なるべく多くの人に読み味わってほしいですね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “真藤順丈”関連記事 】
> No.1037 「宝島」
> No.0815 「しるしなきもの」
> No.0738 「七日じゃ映画は撮れません」
> No.0632 「墓頭」
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