『火のないところに煙は』 芦沢央 > 「このミス」完全読破 No.1033
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1033
『火のないところに煙は』 芦沢央
「このミス」2019年版 : 10位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 5位
「ミステリが読みたい!」 7位
「本屋大賞」 9位
読了日 : 2018年9月6日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2018年6月>
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「染み」「お祓いを頼む女」「妄言」「助けてって言ったのに」「誰かの怪異」「禁忌」から成る連作集です。
主人公は本作の作者(芦沢央)と思しき作家で、「小説新潮」から“神楽坂を舞台にした怪談”をテーマにした短篇小説の依頼を受けることに。
ちょうど主人公は、かつて友人に関係する奇妙で凄惨な事件を、まさに神楽坂で体験していて、今まで心のどこかで引きずり続けていながらきちんと向き合わずにいたこともあり、その事件について書くことにしまして、それが第一話の内容となります。
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そして第二話からは、とある理由もあって怪談短篇集として一冊の本にするべく、周囲の人たちから聞くなどした怪談話を「小説新潮」に載せていくという、“怪談の短篇”と“それを執筆し発表する主人公の心情や行動”とが同時進行する形で描かれていきます。
怪談といっても収録されている話はいずれも(怪奇現象に翻弄されるだけでなく)怪異の謎を解くべく動く人物が登場することもあってミステリ的な展開が中心となりますし、怪異が関わってくることでサスペンス的なドキドキ感も増し、さらに終盤で一捻りをみせる予測のつかない展開があったりと、「このミス」でもベスト5入りするなど評価の高かった(怪談ではない)ノンシリーズ短篇集No.912「許されようとは思いません」を思わすような鋭く刺激的な読み味をそれぞれの短篇作品で楽しむことが出来ると思います。
しかも本作の場合は、怪談話を雑誌で発表していく主人公自身の物語が次第に色濃く浮かび上がってくることにより、ページが進むごとに恐ろしさやおぞましさが侵食していくように感じられ、それに伴い面白さの方も増幅していくので、連作ならではの味わいも堪能出来るのですね。
とはいえ、これは怪談ミステリとして同系であるNo.576「残穢」(小野不由美)もそうでしたが、エンタメ的に派手だったり暴力的だったりなど直接的な恐怖を演出するタイプではなく、得体のしれない恐怖に背すじを凍らせるようなタイプのホラーなので、単行本帯の強気な煽り文(『本年度ミステリ・ランキングの大本命!』)などから力強い読み応えのあるエンタメホラーだと期待してしまうと手応えを感じられないかもしれません。
なので、ハリウッドの大作ホラー映画を観るというよりは、評判の良い怪談イベントに行って怪談噺を聴くような気持ちで読み始めた方が、この単行本の裏表紙にまでゾッとする仕掛けのある怪談連作集の魅力に浸るのには最良なのではないでしょうか(裏表紙の仕掛けは第一話を読んでから確認してください)。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “芦沢央” 関連記事 】
> No.1033 「火のないところに煙は」
> No.0912 「許されようとは思いません」
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