『分かったで済むなら、名探偵はいらない』 林泰広 > 「このミス」完全読破 No.1010
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1010
『分かったで済むなら、名探偵はいらない』 林泰広
「このミス」2019年版 : 125位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2018年3月13日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2017年12月>
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林泰広は、1993年から2009年まで光文社文庫から出版されていた公募アンソロジー『本格推理』にて、「二隻の船」(1996年)、「プロ達の夜会」(1998年)、「問う男」(1999年)の3作品が選出&掲載。
そしてその流れで、2002年に新設された光文社の公募新人賞“KAPPA-ONE登龍門”の第一期として石持浅海、東川篤哉、加賀美雅之と共に選ばれ(第一期だけは公募ではなく『本格推理』に掲載されたアマチュア作家の中から選出)、長篇『The unseen 見えない精霊』を刊行してデビュー。
しかしその後は雑誌に短篇を発表するくらいだったのですが、デビュー作以来16年ぶりの単行本がついに発売となりました。
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というわけで本作は、「プロローグ」「106は頑張ってる」「バカにすんな!」「Bプランでいこう」「マリコさん、只今後悔中」「ロザラインなんているもんか」「陰謀ジジイの質問タイム」「106は頑張っていた」「エピローグ」から成る連作集です。
主人公は居酒屋「ロミオとジュリエット」の常連である刑事で、一人で呑みつつ捜査中(または解決済み)の事件の謎について考えたり、あるいは偶然居合わせた客から謎めいた相談を受けたり(謎解きを吹っ掛けられたり)するのですが、主人公がこれらの謎を解くヒントとなるのが、居酒屋の名前にもなっている戯曲「ロミオとジュリエット」なのですね。
「ロミオとジュリエット」といえば世界的に有名な恋愛悲劇であるものの、主人公が居酒屋内で偶然に耳にしたり聞かされたりするのがそんな「ロミオとジュリエット」の新説でして、それがどんなものかといいますと、主役の二人(ロミオとジュリエット)以外の登場人物にスポットを当てることによりこの戯曲のジャンル自体が(恋愛悲劇から)変わってしまうというものなのです。
章ごとにスポットを当てる脇役が変わり、その度に物語のイメージもがらりと変わっていくこの新たな解釈の数々を聞いているだけでも楽しいですし、それをヒントにして現実の事件・騒動の謎を解いてしまうのも鮮やかで面白く、しかもどちらも固定観念や先入観、立場によって見え方が変わってくるリアリティーさといったテーマ性が込められた反転劇となっているなど、ミステリ的な読み味もなかなか濃厚なものとなっていました。
ただ、(あっさりとはしていなくて)結構食い応えあり癖が強めの作風で、謎や真相に分かりやすいインパクトはないため、ライトなユーモアミステリ作品のように見えてしまう単行本の表紙やタイトルの印象とは違って(誰でも楽しめるミステリ作品というよりは)ミステリ玄人向けかな~といった感じもしたので、窓口は広そうではありながら好みが分かれやすいかもしれませんね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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