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2018年3月27日 (火)

『それまでの明日』 原尞(りょう) > 「このミス」完全読破 No.1009


「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1009

 『それまでの明日』 原尞(りょう)

   「このミス」2019年版 : 1位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 1位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 2位

   読了日 : 2018年3月3日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2018年3月>

それまでの明日それまでの明日
原 りょう

早川書房 2018-03-01
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 No.11「そして夜は甦る」No.135「私が殺した少女」No.260「天使たちの探偵」No.321「さらば長き眠り」No.351「愚か者死すべし」に続く、“探偵沢崎”シリーズの6作目です。

 このシリーズは、1作目の2位(1988年)、2作目の1位(1989年)を始めとしてこれまで発表された5作が全て「このミス」でベスト5入りしていて、「このミスが選ぶ過去10年のベスト20」(1998年版で実施)では2作目が4位、1作目が13位に、「このミス20年のベスト・オブ・ベスト」(2008年に発表)でも2作目が3位、1作目が28位にランクイン。

 さらに1作目は山本周五郎賞候補、2作目は直木賞受賞&ファルコン賞受賞&日本推理作家協会賞候補、3作目は日本冒険小説協会大賞受賞&日本推理作家協会賞候補と、賞レースでもとんでもない実績を持つシリーズですし、著者は小説としてはこのシリーズ作品しか発表していないため、新作を刊行すれば100%の確率で高評価を受けるというとんでもない作家でもあるのです。

 ただ、1988年のデビューから3作目までは1年ごとに新作を発売していたものの、4作目はそれから5年後(1995年)、5作目はまたそこから9年後(2004年)と発売間隔が大きく開き、6作目(本作)も2008年時点で“ほぼ完成している”と著者が発言しながらその後も全く発売される気配はなく、デビューから昨年(2017年)までの29年間で刊行されたのはわずか5作のみという超寡作作家でもあるのですよね。

 そんな実績と寡作さにより、今では“伝説の作家”&“伝説のシリーズ”と化していて、ファンであっても新作が発売されるのは奇蹟が起きない限りありえないのではないかと思ってしまうほどの存在となっていたのですが、前作から14年ぶりの新作である本作がついに発売となりました。

 ちなみに、著者の名前である“りょう”の漢字は(閲覧環境によっては文字化けしてしまう)環境依存文字であるため、ネット上では平仮名や片仮名で表記される場合が多くなっています。

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 私立探偵である沢崎が今回受けた依頼は、金融会社の支店長・望月からの“赤坂にある料亭の女将の身辺調査”で、沢崎が動き始めてすぐに、調査対象である女将がすでに亡くなっていることが判明。

 そのことを依頼者へ伝えに金融会社へ向かうも、不在であった依頼者と会えないばかりか、その場で強盗事件に出くわすことに.....。

 そこから沢崎は、依頼者の意図も不明で依頼者自身も行方不明となるこの謎めいた調査を進めつつ、その過程で関わることになるいくつもの事件や騒動に巻き込まれていくのですが、そんな謎が謎を呼ぶストーリー展開やそれを支えるプロットはベテランならではの巧みさで形作られていますし、それを魅力的な文章力で描いていくので、やはり一旦読み始めてしまえば自然にグイグイと惹きつけられてしまうこと間違いなしです。

 それに、皮肉屋で昔堅気という典型的なハードボイルド探偵である主人公のキャラクターや、登場人物たちと繰り広げる思わずニヤリとしてしまうような会話ややり取りの数々、細部にまでこだわった小道具・演出などなど、“これぞハードボイルド系探偵小説!”といった雰囲気で作品全体が覆われているので、まさに本物のハードボイルド小説を堪能できますし、“探偵・沢崎の物語”を長い間待ち望んで来た読者であれば(懐古の気持ちに浸りつつ)大満足の読み応えとなるでしょう。

 とはいえ、ストーリー的にはクライマックスに向けて爆発的に上昇していくというよりは物語が淡々と進んでいくといった感じですし、読者を圧倒するようなエンタメ的カタルシスがあるようなタイプでもないので、本作でシリーズ初読みの人が過去のシリーズ作品のあまりに偉大すぎる実績や評価から期待を高め過ぎてしまうと、少々物足りないというか拍子抜けした読後となってしまうかもしれません。

 なので、シリーズ初期作における共通した謎となっていた“身元不明であった(主人公の)パートナーの安否”に関しては(本作を先に読むと)ネタバレとなってしまうこともあるので、過去シリーズ作未読の人は1作目から順に読んでこのシリーズの面白さや楽しみ方を体に染み込ませたうえで本作を読んだ方が、この発売されたこと自体が“事件”である本作ならではの(原りょう作品でしか味わうことの出来ない)魅力を最大限に堪能できるのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “原尞(りょう)”関連記事 】

  > No.1009 「それまでの明日」
  > No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」

  > No.0351 「愚か者死すべし」
  > No.0321 「さらば長き眠り」
  > No.0260 「天使たちの探偵」
  > No.0135 「私が殺した少女」
  > No.0011 「そして夜は甦る」


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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

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