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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1008
『サーチライトと誘蛾灯』 櫻田智也
「このミス」2019年版 : 投票数0
受賞(候補) : 「ミステリーズ!新人賞」受賞作
『サーチライトと誘蛾灯』 収録
(「日本推理作家協会賞〈短編部門〉」候補作
『火事と標本』 収録)
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 29位
読了日 : 2018年2月11日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2017年11月>
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著者の櫻田智也は、インターネットコンテンツ“デイリーポータルZ”の元ライターという経歴を持っているのですが、2013年に「友はエスパー」で“創元SF短編賞”の候補となった後、同じ年に「サーチライトと誘蛾灯」で“ミステリーズ!新人賞”を受賞。
ただ、(受賞作がすぐに発売される“長編が対象の新人賞”とは違って)短篇が対象の新人賞を受賞しても単行本デビューとなるまで年数が掛かる場合が多くあるのですが、この著者の場合もその例に漏れず、受賞から4年後にようやくのデビューとなりました。
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というわけで本作は、「サーチライトと誘蛾灯」「ホバリング・バタフライ」「ナナフシの夜」「火事と標本」「アドベントの繭」の五篇を収録したシリーズ短篇集です。
主人公であり探偵役となるのは、30代らしき見た目の青年ながら珍しい昆虫を探して放浪している魞沢泉(えりさわ・せん/"えり"は環境依存文字:魚偏へんに入)で、そんな主人公と関わることになった人物の目線で語られていきます。
この主人公というのが(“昆虫好き”というイメージそのままに)少年のような純粋さや無邪気さを伴う穏やかで天然な性格なので、登場人物たちとの会話ややり取りは、微妙にズレたところがあるかと思えば絶妙な掛け合いを見せるなど、軽妙で楽しい雰囲気に満ち溢れているのですね。
そして本作の特徴というのが、(単行本のあとがきにも書かれているように)泡坂妻夫の“亜愛一郎シリーズ”を意識して作られていることでして、それ故に主人公たちの軽妙なやり取りの中に伏線が巧妙に仕込まれていて、コミカルな雰囲気とミステリトリックとの融合具合が絶妙なものとなっているので、気軽な感じで読み進めていると意外に読み応えあるミステリ的な刺激に“おッ”と思わされるのではないでしょうか。
それでもまあいわゆるユーモアミステリに分類されてしまうような作品かなと思うものの、後半に収録されている二篇は主人公があまり関わってこない(または全く関係しない)過去話が中心なこともあってか、(前半三作とは少々作風が異なり)情緒的な雰囲気やシリアス系物語としての読み味がとても魅力的に感じられたので、本作が面白かったのはもちろんですが、それ以上に次作以降への期待が大いに高まる読後感となりました。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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