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2018年3月 8日 (木)

『彼女の色に届くまで』 似鳥鶏 > 「このミス」完全読破 No.1007

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1007

 『彼女の色に届くまで』 似鳥鶏

   「このミス」2018年版 : 40位

   受賞(候補) : (「本格ミステリ大賞」候補)
            (「日本推理作家協会賞〈短編部門〉」候補作
              『極彩色を超えて』<『鼠でも天才でもなく』を改題>収録)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 18位

   読了日 : 2018年2月10日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2017年3月>

彼女の色に届くまで彼女の色に届くまで
似鳥 鶏

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 「雨の日、光の帝国で」「極彩色を超えて」「持たざる密室」「嘘の真実と真実の嘘」「そして君になる」の五章から成る連作集です。

 主人公の緑川礼は、画商の息子(実家が画廊)ということもあって幼き頃から絵が抜群に上手かったため、将来は超有名画家になって成功すると信じて疑わず、中学に入っても“自称天才”的な態度や考えのままに斬新さのみを追い求めたスケッチばかりを描き続けることに。

 しかし、その間に技術を磨き努力してきた同年代(中学生)の画家志望者との技量差が圧倒的に開いていることに気付いたのをきっかけに態度を改め、遅まきながら技術を鍛え始めて、高校も美術科ではなく普通科に通いつつ(部員が一人だけの)美術部で活動することになってから本作の本編がスタートします。

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 そんな主人公は美術(絵画)に関わる事件に度々巻き込まれるのですが、そんな事件の謎を解き明かす探偵役となるのが同じ学年の千坂桜(千坂さん)でして、実在する絵画をヒントにして天才的な閃きで事件の真相を浮かび上がらせてしまうその推理は鮮やかで見事なものなのです(その実在する絵画は単行本では本編中に白黒写真が、巻末にはカラー写真が掲載されています)。

 ただし千坂さんは根っからの無口でしかも他人と感性が異なることもあり、推理の説明を上手くできないため、千坂さんの推理内容を察したうえで周りの人に説明する役割を担うのが主人公なのですね。

 絵画に関わる事件が起き(実在の)絵画が謎を解くカギとなるという美術ミステリとしてオーソドックスともいえる展開は、シチュエーションの多様さや謎のタイプの豊富さ、本格的な推理内容などにより読み応えありますし、そこに千坂さんの閃きを読み取りつつそれを他の人にも分かりやすいように噛み砕いて解説するという主人公の“二段階推理”が加わることによって(単なる美術ミステリでは終わらない)本作ならではのミステリ的な魅力が満ち溢れていたように思います。

 そしてもう一つの読み所となるのが青春物語で、主人公と千坂さんコンビに、主人公の親友で筋肉ナルシスとの風戸翔馬やその他登場人物たちも加わって織り成すやり取りはコミカルさもあって楽しいですが、絵描きとしても天才でありながら自覚のない千坂さんに対し、(自分も画家を目指しているのに千坂さんの才能に圧倒されている)主人公が(千坂さんのために)画家になるための道を描き導いていくという、主人公の嫉妬や葛藤が激しく入り混じった心情や行動にこそ(青春物語だからこそ感じられる)強い印象と心に響くものがありました。

 さらには、似鳥作品ならではの大仕掛けが終盤で明らかになったり、今回は高校編だけに留めておけばシリーズ化となりそうなのに一冊の中でその先まで描いてしまう出し惜しみの無さなどにより、連作としても青春物語としても完成度と濃度が高いので、“年度を代表するほどの大傑作”といったタイプではないものの、青春ミステリ好きの人にはぜひチェックしてみてほしい作品ですね。


> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “似鳥鶏” 関連記事 】

  > No.1030 「名探偵誕生」
  > No.1007 「彼女の色に届くまで」

  > No.0668 「昨日まで不思議の校舎」
  > No.0662 「いわゆる天使の文化祭」
  > No.0660 「まもなく電車が出現します」
  > No.0647 「さよならの次にくる〈卒業式編〉〈新学期編〉」
  > No.0646 「理由あって冬に出る」


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