『後妻業』 黒川博行 > 「このミス」完全読破 No.1005
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1005
『後妻業』 黒川博行
「このミス」2015年版 : 15位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 7位
読了日 : 2018年1月30日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 単行本 <2014年8月>
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黒川博行は、1984年のデビュー以来数多くの作品を発表して来たベテラン作家ですが、そんな作家人生の中でも(デビュー30周年を迎えた)2014年は特に大活躍の一年となりました。
まずは人気の“疫病神シリーズ”の新作であるNo.745「破門」にて、自身6度目、このシリーズだけでも3度目のノミネートにしてようやく直木賞を受賞し、「このミス」でも初となるベスト10入りを果たすなど、著者の新たな代表作となるほどの評価を受けることに。
そして受賞第一作として同年に発売されたのが本作ですが、刊行直後に本作で扱った(当時はまだあまり知られていなかった)犯罪が現実にも発覚し、メディア等でセンセーショナルに取り上げられるほどの大事件となったこともあって、本作に対しても(“まるで預言書のようだ”と話題になるなど)注目が集まりましたし、2016年には映画化もされています。
ただそんな話題性だけでなく、「このミス」では『破門』とのダブルランクインを果たし、「週刊文春ミステリーベスト10」では『破門』を差し置いてベスト10に入るなど、ミステリ系ランキングでも高く支持されたのですね。
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タイトルになっている“後妻業”とは、金持ちの高齢男性の後妻に収まり、その男性の死後に遺産を根こそぎ奪っていくことを生業としている犯罪で、本作と(本作刊行直後に発覚した)青酸連続不審死事件によってその名が広まりました。
本作においては、妻に先立たれた寂しさから結婚相談所に登録した資産家の中瀬耕造(91歳)が、そこで知り合った22歳下の小夜子と同居を始めるも、間もなく脳梗塞により死去。
元々小夜子に不信感を抱いていた構造の娘である尚子と朋美は、構造が死んだ直後から本性を現して遺産を掻っ攫っていこうとする小夜子に対し、学生時代の同級生である弁護士の協力を得て徹底抗戦する構えをみせることに。
という展開となれば、普通なら被害者(正義)側が犯罪者(悪)側に立ち向かっていく勧善懲悪的な物語となっていきそうではありますが、そこはやはり黒川作品なので、小夜子とその黒幕である結婚相談所所長・柏木による周到な計画を基にした犯罪サスペンス劇や、協力関係にありながらお互いに相手を出し抜こうと企むなどスリルあふれる関係性、そんな二人による関西弁でのテンポ良く小気味よいやり取りなど、犯罪者側を中心に描かれていきます。
そして被害者側の方も、小夜子の犯罪の尻尾を掴み追い込むべく動く探偵が、この事件を利用して私欲に走り始めたりもするので、まさに悪vs悪が激しくぶつかり合う犯罪小説となっていますし、そんなノワール的な作品を黒川博行が手掛けているので面白くならないはずがないのですよね。
なので、被害者側に共感できたり犯罪者側が正しく罰を受けるような物語を期待してしまうと読んでいて乗り切れない感があるかもしれませんが、犯罪者が(極悪人だし好きになど決してなれないのだけれど)魅力的にドス黒く輝いてみえる犯罪小説の傑作だと思うので、読めば直木賞受賞作『破門』と同年発売ながらこれだけ高い評価と話題性を得たのも当然だと実感できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0966 「果鋭」(後日更新予定)
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> No.0834 「勁草」
> No.0745 「破門」
> No.0645 「落英」
> No.0620 「繚乱」
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