『虹の向こう』 池田久輝 > 「このミス」完全読破 No.1004
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1004
『虹の向こう』 池田久輝
「このミス」2019年版 : 投票数0
受賞(候補) : (「日本推理作家協会賞〈短編部門〉」
候補作 『影』 収録)
総合ランキング :
年度ランキング :
読了日 : 2018年1月29日
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2017年11月>
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「虹」「影」「空」「スターティング・オーバー」の四篇から成るノンシリーズ短篇集です。
まず最初の「虹」は、訳ありの寺を親から継ぐのに踏ん切りがつかない主人公が、学生時代からの親友の頼みで、何らかのトラブルを抱えているらしい(親友の)元妻について(探偵のように)調査するという、ハードボイルド色の強い作品です。
続く日本推理作家協会賞(短編部門)候補作である「影」は、「虹」から続けて読むと(名前が出てこないこともあって)同じ主人公のように思えてしまうほどに「虹」と空気感が似た作風となっています。
こちらの主人公は、押しが強く威張り屋な刑事から情報屋としてこき使われている私立探偵で、その刑事からある女性の尾行調査を依頼(命令)されたため、尾行の目的を知らされていないうえに(尾行対象である)女性に怪しい行動が見受けられないという(主人公にとって)謎めいた尾行調査を行っていくことに。
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三作目の「空」は一転して高校生が主人公で、高校野球最後の試合を終えた直後にチームメイトから問いかけられた謎、さらに部活帰りの常連となっていた鉄板焼き屋がいつの間にか店を閉めていたという謎を中心にして、青春物語が繰り広げられていきます。
ラストを飾る「スターティング・オーバー」の主人公は刑事で、かつて指導を受けた大先輩(二年前に警察を定年退職)から、青年(沖縄出身)の失踪した兄を捜してほしいと頼まれたものの、刑事は個人的な依頼を受けることが出来ないため、それを知っているはずの大先輩が何故自分に頼んで来たのか不思議に思いつつ青年と関わっていく話。
四つの短篇の共通点は、京都を舞台としているという他にもありまして、それは、まず主人公が(主に依頼内容に関して)謎を抱えながら行動することになり、その過程で主人公がその謎の真相に気づくも読者には明かされず、クライマックスで読者にも真相が開示される、といった(大まかな)流れで、このミステリ的な展開により謎に対する求心力が二段階加速するかのように感じられるので、一度読み始めればこの謎めいた物語にいつの間にか入り込んでしまうのでは。
そして本作を一言で表すなら“味がある”なのではないかと思うのですが、一篇辺り50ページほどという分量だったり、ミステリ的にもハードボイルド的にもガッツリとした読み応えがあるタイプではないので、読む人によっては“薄味過ぎる”とか“味気がない”などの感想になってしまうかもしれません。
ただ、好みに合う人であれば、ミステリ要素とハードボイルド要素とが絶妙な匙加減で混ざり合ったこの作品集の雰囲気に心地よく酔いしれ味わい尽くせるに違いないので、多くの人にお薦めしたい一品というわけではないものの、この味が分かる通好みの人を選りすぐって誘いたくなるような短篇集ですね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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