にほんブログ村2

« 「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年2月) | トップページ | ◎船橋記念(2018年)穴馬予想&結果 »

2018年1月16日 (火)

『ミステリークロック(コロッサスの鉤爪)』 貴志祐介 > 「このミス」完全読破 No.991

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.991

 『ミステリークロック』 貴志祐介

    * 文庫化の際に『ミステリークロック』『コロッサスの鉤爪』に分冊

   「このミス」2018年版 : 4位

   受賞(候補) : (「本格ミステリ大賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「bookaholic認定2017国内ミステリーベスト10」 1位
              「本格ミステリ・ベスト10」 4位
              「ミステリが読みたい!」 4位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 10位

   読了日 : 2017年11月8日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2017年10月>

ミステリークロックミステリークロック
貴志 祐介

KADOKAWA 2017-10-20
売り上げランキング : 30915

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 No.466「硝子のハンマー」、『狐火の家』、No.469「鍵のかかった部屋」に続く、“防犯探偵・榎本シリーズ”の4作目です。

 防犯コンサルタントでありながら実は泥棒でもある怪しい探偵役・榎本径と、美人で優秀ながらトンチンカンな推理をしては周囲を呆れさせている弁護士・青砥純子が活躍するシリーズですが、前作から6年ぶりとなる待望の新作で、その間にはテレビドラマ化されるなどのメディア展開もあったため、今やミステリ小説好き以外の人にも注目のシリーズとなっているのでは。

 ちなみに、本作に収録の「ゆるやかな自殺」と「鏡の国の殺人」は、単行本発売よりも先にドラマ化されています。

 なお、このシリーズは1作目以外は中短編集ということもありストーリー的な繋がりはないですし、メインの登場人物も二人だけでそのキャラクターや関係性は読んでいけばすぐに把握できるので、(前作までは未読で)いきなり本作から読んでも問題なく楽しむことが出来ると思います。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 というわけで本作は、「ゆるやかな自殺」「鏡の国の殺人」「ミステリークロック」「コロッサスの鉤爪」の4篇を収録していますが、ページ数的にも短篇集というよりは中篇集といった感じでしょうか。

 最初の「ゆるやかな殺人」には青砥純子は登場せず、密室のヤクザ事務所で構成員の拳銃自殺が起きたと思いきや殺人の疑いが浮上したという事件に榎本径が巻き込まれてしまう、比較的コミカルで読みやすい一品です(とはいえ年刊選集『ザ・ベストミステリーズ』に選ばれたほどの作品でもあります)。

 しかし、青砥純子も登場する「鏡の国の殺人」と「コロッサスの鉤爪」は、それぞれ“美術館に展示された『鏡の国のアリス』をモチーフにした迷路”に“深さ300メートルの深海も含めた大海原”というかなり特殊な密室の舞台が作られ、前者では監視カメラに加えて迷路が、後者では音や気圧が密室を生み出す要因となっていたり、“アリス”や“潜水”などの専門知識が謎を解く重要なカギとなるなど、ボリュームある中篇ということもあって、密室ミステリとしてかなり濃厚な読み応えとなっています。

 そして極め付きなのが表題作(青砥純子も登場)でして、大御所女流作家の別荘に招待客数人が訪れたところ、その作家が服毒死するという本格ミステリらしい導入となっていますが、そこからは(作家がコレクションしていた)数多くの高価な時計たちが絡んでくることにより“時”によって演出された密室が姿を現し、まるで精密に作られた時計の機構のように複雑な謎やトリックや推理がガッチリと噛み合い、密室ミステリとして圧倒的な迫力さえ生み出すほどの読み応えとなっているのですね。

 ただその分、(テレビドラマ化された作品とは思えないくらいに)多くの人が難解に感じるような内容となっているため、状況やトリックや推理や真相を理解するのはかなり大変ですし、4篇共に(というかこのシリーズ作品自体が)犯人は読者にあからさまであるという特徴があるので、密室ミステリに興味がないと(ボリュームも結構あるため)読み進めるのが辛くなってしまうかもしれません。

 とはいえ、主人公二人のやり取りや、「鏡の国の殺人」に出てくるルイス・キャロル研究家を始めとしたキャラクターの濃い登場人物などにより、ただ難解なだけでなく楽しくてニヤリとできる場面が良いタイミングで出てきますし、“密室(本格ミステリ)のトリックが出尽くした”と言われる現代において、トリックをあたかも機械仕掛けの芸術作品のごとく複雑に繊細に突き詰めることで現代の密室ミステリの可能性を広げたという功績もあると思うので、少しでも気になるのであれば(覚悟を決めたうえで)この密室にこだわり抜いた本作に挑んでみてはいかがでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “貴志祐介” 関連記事 】

  > No.991 「ミステリークロック」
  > No.698 「雀蜂」
  > No.469 「鍵のかかった部屋」

  > No.466 「硝子のハンマー」
  > No.428 「ダークゾーン」
  > No.361 「悪の教典」
  > No.126 「新世界より」
  > No.012 「黒い家」


 「屍人荘の殺人」今村昌弘 <<< PREV
            NEXT >>> 「(仮)ヴィラ・アーク 設計主旨」家原英生

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

Gapaku3298_tp_v

« 「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年2月) | トップページ | ◎船橋記念(2018年)穴馬予想&結果 »

01.「このミス」完全読破(ミステリ小説)」カテゴリの記事

Google AdSense

楽天市場

「このミス」完全読破:次に感想を書く予定の本

「このミス」完全読破:現在読書中の本

無料ブログはココログ