『Y駅発深夜バス』 青木知己 > 「このミス」完全読破 No.987
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.987
『Y駅発深夜バス』 青木知己
「このミス」2018年版 : 23位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 9位
「ミステリが読みたい!」 18位
読始:2017.10.8 ~ 読終:2017.10.13
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2017年6月>
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著者の青木知己は、(本格ミステリの短編を対象に毎年一回公募し)入選作品を一冊の本に収録して刊行する公募アンソロジー“新・本格推理”に「Y駅発深夜バス」で入選し、同作は2003年発売の『新・本格推理03 りら荘の相続人』に収録。
すると、日本推理作家協会による年刊アンソロジー『ザ・ベストミステリーズ 2003』と本格ミステリ作家クラブによる年刊アンソロジー『本格ミステリ04』にも選出・収録されるなど、アマチュア作家の作品ながらかなり高い評価を受けました。
さらには、「迷宮の観覧車」が『新・本格推理04 赤い館の怪人物』(2004年)に、「九人病」が『新・本格推理05 九つの署名』(2005年)に収録され、2007年には長編の『偽りの学舎』で待望の単行本デビューを果たすも、その後はデビュー2作目の刊行も短編作品の発表もないまま年月が過ぎていくことに(その期間にはミステリ新人賞に応募し一次選考で落選するなどあったようです)。
そして、最初に高い評価を受けた「Y駅発深夜バス」を表題とした本作を刊行したことで、前作から10年ぶりとなる再デビューを果たしたのですね。
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というわけで本作は、「Y駅発深夜バス」「猫矢来」「ミッシング・リング」「九人病」「特急富士」の五篇を収録したノンシリーズ短篇集です。
やはり一番の注目となるのが表題作ですが、深夜バスに乗った主人公が奇妙な体験をしたところ、その二年後に驚くべき事実が判明するというもので、幻想小説的でもある不思議な出来事の真相が(まるで霧が晴れたかのように)鮮やかに姿を現す本格ミステリ的な仕掛けの巧みさが秀逸です。
しかも、それによって胸を突くほどの人間ドラマまでもが浮かび上がってくるなど、50ページに満たない短編ながらも読み応え十分で、評価の高さにも納得でした。
その他の作品も、女子中学生が主人公の青春ミステリに、館の見取り図や登場人物の行動表や読者への挑戦もあるオーソドックスな犯人当て、怪奇ホラーな雰囲気の物語の中でミステリ的捻りを加えた作品に、次々とトラブルに見舞われながら犯行を行なう主人公の姿をコミカルに描く時刻表ミステリと、収録作の内容はバラエティーに富んでいて、推理小説の様々な魅力をあらゆる角度から堪能できる短篇集となっています。
ただ、どちらかといえば通好みの作品集といった感じなため、とんでもない衝撃や驚きを呼び起こすようなインパクトある内容を期待してしまうと物足りなく思えてしまうかもしれませんが、シンプルながら精錬されたミステリ技法の冴える良作揃いなので、読めば短編だからこそ味わえる本格ミステリの面白さに心地良く浸れるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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