『暗手』 馳星周 > 「このミス」完全読破 No.968
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.968
『暗手』 馳星周
「このミス」2018年版 : 41位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2017.7.12 ~ 読終:2017.7.16
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2017年4月>
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『夜光虫』に続くシリーズの2作目です。
その前作は、『不夜城』で鮮烈なデビューを飾った2年後に発売されたデビュー3作目だったので、実に19年ぶりというシリーズ続編なのですね。
ちなみに、自分はシリーズ続編だということを読み終えてから知ったのですが、読んでいる最中には特に気になることもなかったので、本作からいきなり読んでも楽しめることは保証します。
とはいえ、(シリーズ続編であることを知った)今から思えば、前作の内容に関する説明(ネタバレ?)が結構ありましたし、前作を読んでいた方が本作における主人公の心情もより理解できるのではないかと思うので、出来ることなら(「このミス」でも11位にランクインしている)前作から読むのが良いのではないでしょうか。
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殺し以外の仕事なら何でも請け負って完璧にこなすことから、イタリアの黒社会でいつしか”暗手”と呼ばれるようになった加倉昭彦の元に、サッカー賭博の帝王から八百長に関する依頼が。
八百長のターゲットとなるのは、イタリア・セリエAの中堅クラブで救世主的活躍を見せている若き日本人GK・大森怜央で、加倉は大森に対し、自ら(慣れないイタリアの地における)よき相談役となったり、日本人娼婦のミカを近づけるなど、大森に八百長をさせるための罠を仕掛け始めて.....。
こういった(現実にある)プロスポーツを扱う小説の場合、とりあえずその作品を書く時だけの付け刃的な情報に違和感を覚えることが少なくないのですが、本作の場合はサッカー関連の書籍も多く刊行している馳星周なので、セリエAで活躍する日本人GKを取り巻く環境や状況などの設定は実際にありそうなものでしたし、八百長に関しても、選手はやりたくなかったとしても裏社会の怖い人間による周到な罠にはまってしまえばもう他に選択肢などないという恐ろしさがリアルに感じられるので、そんなイタリアサッカーに関する物語を追うだけでもなかなかの面白さです。
しかし、後半に入ると主人公の巧みな仕掛けもあることがきっかけで崩れ始めていくため、クライムノベル(ノワール)色が一層濃くなり、そこからは破滅へ向かって暴走していくかのような主人公の姿が身震いするほどの圧倒的な迫力で描かれていくのですね。
ストーリー自体は結構シンプルなので、(最近の作品でいえば)No.607 「エウスカディ(殉狂者)」などと比べると物語的な厚みや読み応えは劣るものの、その分 加速し始めた時の怒涛の如き熱量は半端ないものになっていますし、初期の馳ノワールを思わせる面白さがぶち込まれているので、最近の馳作品にあまり魅力を感じず昔(の馳作品)を偲んでいた人には特にお薦めです。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “馳星周” 関連記事 】
> No.968 「暗手」
> No.607 「エウスカディ(殉狂者)」
> No.521 「暗闇で踊れ」
> No.497 「淡雪記」
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