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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.971
『落語魅捨理(ミステリ)全集 坊主の愉しみ』 山口雅也
「このミス」2018年版 : 60位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 14位
読始:2017.8.7 ~ 読終:2017.8.8
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2017年5月>
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No.604「謎の謎その他の謎」以来5年ぶりとなる山口雅也の新作です。
これだけ新作が発売されなかったのには理由がありまして、『謎の謎~』を発売した翌年に、意識不明に陥り救急搬送されるほどの重病に罹り、それから約一年半もの間、ほぼ寝たきりの闘病生活が続いていたのだそうです(講談社BOOK倶楽部参照)。
幸いにも病気から完全回復し、作家として復帰できるようになったことで、“今まで自分が書いてこなかったもの” “ミステリ史的にも誰も書いてこなかったようなもの”を書きたいという思いが出て来たそうで、そんな願望を同時に叶えることになったのが本作、というわけなのですね。
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そんな本作は、「坊主の愉しみ」「品川心中幽霊」「頭山花見天狗の理」「蕎麦清の怪」「そこつの死者は影法師」「猫屋敷呪詛の婿入り」「らくだの存否(ゾンビ)」の7篇を収録したシリーズ短篇集です。
題材となるのはもちろん落語でして、「猫の皿」「品川心中」「時そば」といった実際に存在する名作古典落語をベースに、山口雅也流のアレンジが加えられているのですが、(舞台を現代に変えたり最新テクノロジーが登場するなどの)あまりに突飛なアレンジではなくて、落語家が落語を演じている体(てい)で描かれ、江戸時代の出来事が語られ、(落語に詳しくないので細かなことは分かりませんが)基となる演目の内容を大幅に変えてもいません。
ではどのようなアレンジがなされているのかといいますと、狭義のミステリ要素(密室殺人など)や広義のミステリ要素(ホラーなど)が話に組み込まれていて、それにより(江戸時代の人間には知り得ないような)メタ的な会話が面白可笑しく繰り広げられたり、落語の性質を活かした(謎の)真相が明かされたり、基となる落語のオチの後にさらなる大オチを生み出したりしているのです。
そのため、“魅捨理(ミステリ)全集”とタイトルに入っていながら分かりやすいミステリ成分は控えめで、『謎の謎~』や近年の法月綸太郎作品(No.659「ノックス・マシン」など)のような実験作的な趣があり、あくまで落語がメインとなっているため、正統派なミステリ小説として期待して読んでしまうと楽しみ所が分からないまま読み終えることになってしまうかもしれません。
とはいえ、落語を知っている(好きな)人ならより面白く感じるであろうことはもちろん、落語の知識がそれほどなくても落語の魅力、そしてそこに加えられた山口雅也流アレンジを堪能出来ると思いますし、メタ的な会話だけでなく「生きる屍」という言葉が登場するなどマニア心をくすぐりニヤニヤ笑いを誘ってくるような遊び心に溢れているので、読む人を選ぶ作品だとは思いますがツボが合う人なら見事にハマってしまうのではないでしょうか。
ちなみに、本作で実現させた著者の願望というのは、前者が“時代小説”、後者が“ミステリと落語の完全融合”。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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