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2017年4月27日 (木)

『ダブル・ミステリ(月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー)』 芦辺拓 > 「このミス」完全読破 No.952

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.952

 『ダブル・ミステリ(月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー)』 芦辺拓

   「このミス」2018年版 : 67位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 13位

   読始:2017.2.28 ~ 読終:2017.2.28

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2016年12月>

ダブル・ミステリ (月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー)ダブル・ミステリ (月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー)
芦辺 拓

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 かつての推理小説は、解答編の前に作者からの“読者への挑戦”ページが差し込まれていたり、その解答編が(立ち読み等では読めない)袋とじになっているなど、物語以外の部分にも趣向を凝らした作品が多く存在したものの、近年ではそういったタイプの作品は(ないことはないけれど)あまり見かけなくなりました。

 ところが2016年の新作である本作は、表表紙側(縦書き)と裏表紙側(横書き)とで異なる物語が繰り広げられ、それぞれのラストには作者からの(“読者への挑戦状”ならぬ)“読者への案内状”があり、さらには両話共通の解答篇が袋綴じになっているなど、手にしただけでワクワクしてしまうような遊び心に溢れた本の造りとなっているのですね。

 ちなみに、奥付は同じものが表表紙側と裏表紙側の両方にありますし、表紙カバーの折り返し部分に書かれている粗筋と作者の経歴も両方にあるという、細かな部分まで左右対称的な造りになっています。

 なお、表表紙側の「月琴亭の殺人」と裏表紙側の「ノンシリアル・キラー」のどちらから読み始めても問題ないのですが、よほどの捻くれ者でない限りは普通に表表紙側の「月琴亭の殺人」から読むのが良いと思います(「ノンシリアル・キラー」を先に読むと「月琴亭の殺人」を読んだ際に登場人物の一人にだけ意識が集中してしまうかもしれませんし)。

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 まず表表紙側から始まる「月琴亭の殺人」は、著者のライフワークとも言うべき“森江春策シリーズ”の一作でして(だからといって過去作を読んでおく必要はありません)、弁護士・森江春策が幻の映画の上映会に誘われて一本の道のみで陸と繋がる島に建つホテルにやって来ると、そこでは上映会を行なう予定などないことが判明。

 しかもそこには春策と同じように騙されてこのホテルに招待された(それぞれ面識のない)四人の男女がいまして、さらにホテル内で(春策を含む)五人皆が因縁や恨みの気持ちを向ける人物が(椅子に縛られた状態で)発見されたのをきっかけに、謎めいた殺人事件が起きたり、舞台は“クローズド・サークル”状態と化すなど、王道的な館ミステリが繰り広げられていきます。

 一方で裏表紙側から始まる「ノンシリアル・キラー」は、女性雑誌記者がとある死亡事件の取材を行っていると、その周囲で不審死事故がいくつも起きていることが判明していくというサスペンス的な内容で、最近になって話題に取り上げられることが多くなったマタハラ(マタニティ・ハラスメント)が深く関わってくるなど社会派な読み応えもあります。

 そんな(無関係に思われた)両話の謎が袋綴じの解答篇で一気に解かれるわけですが、驚くべき真相や衝撃的なトリックが待ち受けているわけではないので、(リバーシブル構成&装丁や袋綴じなどによる凝りに凝った演出から)期待を高め過ぎてしまうと思わず脱力してしまうかもしれません。

 そもそも、「月琴亭の殺人」におけるクローズド・サークル設定が、携帯電話が通じたり濡れるの覚悟でなら島から陸地に歩いて行けるなどゆるいものだったので、その時点で“脱力系”であることは予測できたりもするのですよね。

 ただこれらは著者による意図的な狙いでして、本格ミステリ小説の王道をあえてすかしたり捻ったりすることで面白さを生み出すという、本格ミステリを読み慣れている人だからこそ(ニヤニヤしながら)楽しみ味わうことの出来る解答篇になっているので、本格ミステリの王道的な魅力を期待してしまうと物足りなく感じてしまうかもしれませんが、(少し捻くれたところのある)本格ミステリマニアであればこの構成や装丁だけでなく物語(ミステリ要素)にも遊び心が詰まった本作を堪能できるのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “芦辺拓” 関連記事 】

  > No.952 「ダブル・ミステリ」

  > No.780 「異次元の館の殺人」
  > No.704 「スチームオペラ 蒸気都市探偵譚」
  > No.697 「時の審廷」
  > No.684 「奇譚を売る店」
  > No.369 「綺想宮殺人事件」


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