『サーモン・キャッチャー the Novel』 道尾秀介 > 「このミス」完全読破 No.947
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.947
『サーモン・キャッチャー the Novel』 道尾秀介
「このミス」2018年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2017.1.28 ~ 読終:2017.1.31
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年11月>
サーモン・キャッチャー the Novel 道尾 秀介 concepted by 道尾 秀介×ケラリーノ・サンドロヴィッチ 光文社 2016-11-17 売り上げランキング : 29522 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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本作は道尾秀介の作品なのですが、それとは別に「concepted by 道尾秀介×ケラリーノ・サンドロヴィッチ」とも書かれています。
このケラリーノ・サンドロヴィッチという人物は、劇団「ナイロン100℃」の主宰で数々の演劇系の賞を受賞している劇作家/映画監督なのですが、そんな劇作家としての顔を知らなかったとしても、80年代に結成し(1991年に一度解散したものの)2014年に活動再開したバンド“有頂天”のボーカルであるケラ(KERA)といえば分かる人も(特に40代以上なら)多いのではないでしょうか。
そんなケラリーノ・サンドロヴィッチと道尾秀介の二人が打ち合わせを重ねて一つのコンセプトを創り上げ、それを基に道尾秀介が小説版の「the Novel」、ケラリーノ・サンドロヴィッチが映画版の「the Movie」をそれぞれ手掛けるという企画でして、まずは小説版である本作が発売となりました(映画版は小説版発売時点では企画進行中)。
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物語の象徴的な場所となるのが、場末の屋内釣り堀「カープ・キャッチャー」なのですが、ここでは釣った魚の種類ごとにポイントが定められていて、そのポイントの合計数により景品と交換できるというパチンコ屋のようなシステムを採り入れています。
そんな釣り堀でアルバイトとして働く女子学生、この釣り堀にやってくる度に多くのポイントをゲットしいつしか「神」と呼ばれるようになった老人、釣り堀でとある計画を実行しようとしている中年男性、偶然にも同じ時に釣り堀に居合わせたフリーターの青年とその妹、日頃の孤独感を紛らすために庶民の楽しみを体験したくなった金持ちマダムといった、この釣り堀と関わる複数の人物の目線で、群像劇のように語られていきます。
接点のなさそうな人物たちが協力して目的を遂行するというのはNo.117「カラスの親指」やNo.827「透明カメレオン」などに近いものがありますが、作風は(過去の道尾作品と比べても)とにかく軽快でコメディ要素も強く、(日本語をもじった架空の言語)ヒツムギ語がシュールな笑いを誘ったりも。
とはいえ、同じく映像化を前提した作品であるNo.340「月の恋人~Moon Lovers~」(月9ドラマの原作として書き下ろし)ほどミステリ系エンタメ要素が薄いわけではなくて、全く関係ないと思われた様々な事象が次第に集約していく伏線ミステリとしての読み応えがあったり、(道尾作品らしい)登場人物たちの精神的な成長が描かれたりもします。
なので、道尾作品初期のような“どんでん返し系ミステリ要素”や中期のような“心震わす叙情的ドラマ性”を期待してしまうと手応えを感じられないかもしれないものの、とにかく楽しく読めるエンタメ作品として仕上がっているので、“これがどんな風に映画化されるんだろう?”と考えながら読んでみるのも面白いかもしれませんね。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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> No.0340 「月の恋人~Moon Lovers~」
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> No.0311 「光媒の花」
> No.0294 「球体の蛇」
> No.0233 「花と流れ星」
> No.0186 「龍神の雨」
> No.0169 「鬼の跫音」
> No.0121 「ラットマン」
> No.0117 「カラスの親指」
> No.0097 「ソロモンの犬」
> No.0058 「片眼の猿」
> No.0049 「シャドウ」
> No.0041 「向日葵の咲かない夏」
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