『悪魔を憐れむ』 西澤保彦 > 「このミス」完全読破 No.950
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.950
『悪魔を憐れむ』 西澤保彦
「このミス」2018年版 : 27位
受賞(候補) : (「本格ミステリ大賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 7位
「ミステリが読みたい!」 10位
「週刊文春ミステリーベスト10」 12位
読始:2017.2.7 ~ 読終:2017.2.11
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年11月>
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『解体諸因』、『彼女が死んだ夜』、『麦酒の家の冒険』、『仔羊たちの聖夜』、『スコッチ・ゲーム』、『依存』、『謎亭論処 匠千暁の事件簿』、『黒の貴婦人』、No.244「身代わり」に続く、“匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)”の10作目です。
近年の西澤作品としては“腕貫探偵シリーズ”が人気ですが、それでもやはりデビュー作から始まるこのシリーズが今でも著者を代表するシリーズで変わりないでしょうね。
そんなシリーズの7年ぶりとなる待望の新作でして、(過去のシリーズ作品を未読で)本作からいきなり読んでも問題なく楽しむことが出来るものの、前作までの話題に軽く(わざとらしく?)触れる場面がいくつかあるので、シリーズ作品を通して読んでいた方がより楽しめるのは間違いないと思います。
そしてシリーズ過去作から読んでみようという場合には、本作巻末のあとがきに(刊行順ではなく)時系列順に並べたシリーズ作品リストが載っているので、それを参考に(刊行順に読むのではなく)その時系列順に読んでいくのも良いでしょうし、同じくあとがきには本作で話題に触れた場面がどの巻に収録されているのかが書いてあるので、本作をまず読んだ後で(あとがきを参考に)該当する過去作を(気になったエピソードから)読んでいくのも良いかもしれません。
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というわけで本作ですが、「無間呪縛」「悪魔を憐れむ」「意匠の切断」「死は天秤にかけられて」の4作を収録した(連作に近い)シリーズ短編集です。
前半の2作は、どちらも主人公である匠千暁(タック)がとある依頼を受け、それに関わる謎を解き明かしていくのですが、一方が部屋の中で起きる心理現象の謎、もう一方が注意深く見張っていたタックの目の前で起きた飛び降り自殺の謎と、どちらもインパクトある魅力的な謎があり、それを基にして謎解きの醍醐味がたっぷり詰まった推理劇が繰り広げられていきます。
しかもどちらの話でも、タックは表向きの真相(トリック)を解き明かすだけでなく、その裏で真犯人が密かに企むもう一つの真相(トリック)をも暴き出したうえでその謎も解かねばならないので、そんな二重に張り巡らされた謎の構図は本格ミステリ的な刺激が強烈ですし、事件の真相が明かされてから浮かび上がってくる人間ドラマもゾクゾクするものがありました。
そして後半の2作は、どちらも西澤作品(このシリーズ)の定番である“お酒を呑みながら事件の謎に付いて語り(推理し)合う”という安楽椅子探偵的な話で、こちらも(前半の2作とは趣きが少し違うものの)本格ミステリならではの魅力を堪能できる推理劇に気持ち良く酔うことが出来るのでは。
ただそんな本格ミステリや推理小説としてレベルが高いというだけではなく、タック、タカチ、ウサコ、ボアン先輩のレギュラー陣を始めとした人物たちのやり取りは単純に面白くてキャラクター小説的な楽しみ方も出来るので、このシリーズが好きな人はもちろん、シリーズ未読の人にもまず読んでみる作品としてお薦めです。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “西澤保彦” 関連記事 】
> No.950 「悪魔を憐れむ」
> No.244 「身代わり」
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