『秋の花』 北村薫 > 「このミス」完全読破 No.820
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.820
『秋の花』 北村薫
「このミス」1992年版 : 12位
受賞(候補) :
総合ランキング : 「本格ミステリ・ベスト100」 71位
年度ランキング :
読始:2015.6.8 ~ 読終:2015.6.12
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 文庫本 <1997年2月>
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No.13「空飛ぶ馬」、No.46「夜の蝉」に続き、『六の宮の姫君』、『朝霧』、『太宰治の辞書』へと続く(2017年2月現在)、“私シリーズ(円紫さんと私シリーズ)”の3作目です。
言わずと知れた北村薫の代表的なシリーズですが、殺人事件などが起きない“日常の謎”系ミステリを日本に広め、後にデビューするミステリ作家に多大なる影響を与えたということで、日本のミステリ小説の歴史を語るうえで避けては通れないほどの重要なシリーズでもあります。
そんなシリーズも1998年に発売した5作目以降は続編が出ていなかったので幕を下ろす形となっていたものの、2015年に17年ぶりとなるシリーズ新作がまさかの発売となったので、まずは未読であった3~5作目から読んでみました(この記事を書いたのは2017年ですが読んだのは2015年)。
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前2作は連作集でしたが、3作目となる本作はシリーズ初の長編となっています。
そしてもう一つ大きな違いがありまして、前2作はもちろんどちらも事件らしい事件など起きない“日常の謎”系ミステリだったのに対し、本作では人の死が関わる事件が起き、その事件の謎を主人公が解いていくという、まさに王道ミステリ的な物語なのです。
具体的には、文化祭の準備期間中に女子高生の津田真理子が校舎の屋上から転落死し、親友の和泉利恵はそれ以来学校を休みがちになり、彼女ら二人の先輩である(大学生の)主人公が事件の真相に迫っていくのですが、やはり人の死が扱われているだけあって謎の追及の過程には人生の重みが感じられますし、真相が明かされた時に湧き上がって来る切なく哀しい感情なども、“日常の謎”では味わえないタイプのミステリ的読み味だと思います。
そのため、前2作と同様の面白さを期待してしまうと手応えを得られないかもしれないものの、主人公とその友人たちとのほのぼのとして楽しいやり取りや円紫さんの鮮やかな推理などこのシリーズならではの魅力は健在ですし、(後に続く作品を通して見てみても)このシリーズの中にあって本作にしか存在しないミステリ小説としての面白さは間違いなく存在するはずです。
なので、本作単体として読んだとしても楽しめるのはもちろん、シリーズの中の一冊として読んだとしても定番と変化とが絶妙に混ざり合った“私シリーズ”の世界を心から堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “北村薫” 関連記事 】
> No.820 「秋の花」
> No.222 「鷺と雪」
> No.046 「夜の蝉」
> No.013 「空飛ぶ馬」
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