『彼女がエスパーだったころ』 宮内悠介 > 「このミス」完全読破 No.894
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.894
『彼女がエスパーだったころ』 宮内悠介
「このミス」2017年版 : 16位
受賞(候補) : 「吉川英治文学新人賞」 受賞
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 4位
「bookaholic認定国内ミステリーベスト10」 10位
読始:2016.6.18 ~ 読終:2016.6.22
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年4月>
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「百匹目の火神」「彼女がエスパーだったころ」「ムイシュキンの脳髄」「水神計画」「薄ければ薄いほど」「佛点」を収録した連作集です。
テーマとなるのは、百匹目の猿現象、超能力(エスパー)、オーギトミー(脳外科手術)、代替医療といった、“人類の叡智=科学”では捉えきれない“超常現象/疑似科学”。
それらに関係する人物や団体に対して語り手である雑誌記者(ジャーナリスト)が取材を行っていく、というルポタージュ的な形式で描かれていきます。
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まあいうなれば世間からいかがわしくて胡散臭く思われているようなものを対象としているわけですが、そんないかがわしい(とされている)ものの本質を捉えようとすることで見えてくる人間の奥深き部分が鋭くえぐり出されていきますし、ネットやメディアからの上っ面な情報に踊らされる現代社会への風刺が込められているなど、ルポ的手法も相まってノンフィクションのようなリアルな読み味さえあります。
その一方で、取材を通して紐解いていったり現在進行形で巻き起きたりする事件や騒動がミステリ・サスペンス的要素で演出されているので物語としての面白さもあり、最初は取材する側として空気のような立ち位置だった語り手が(徐々に存在感を増していき)いつしか語り手自身の物語になっていくという連作ならではの楽しみ方もあるなど、フィクション(小説)だからこその魅力ももちろん携えているのですね。
ルポ的手法で描かれていく連作集というのはデビュー作No.611「盤上の夜」と共通しているものの、『盤上の夜』ほどの圧倒的な読み応えはなくてどちらかといえばクールに淡々と描かれている印象で、好き嫌いが別れそうな作風ではありますが、リアル世界とフィクション世界とが境界線をなくして共存しているような著者らしい魅惑的な疑似現実世界が作り上げられているので、好きな人ならばSFの枠に収まりきらないジャンル分け不能なこの世界観にどっぷりと浸れるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
個人的評価の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “宮内悠介” 関連記事 】
> No.948 「月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿」
> No.894 「彼女がエスパーだったころ」
> No.876 「アメリカ最後の実験」
> No.841 「エクソダス症候群」
> No.664 「ヨハネスブルグの天使たち」
> No.611 「盤上の夜」
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