『亡者たちの切り札』 藤田宜永 > 「このミス」完全読破 No.897
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.897
『亡者たちの切り札』 藤田宜永
「このミス」2017年版 : 32位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2016.7.8 ~ 読終:2016.7.14
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年5月>
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藤田宜永は「このミス」初期の常連作家でしたが、90年代後半以降は作風が変わったこともあり「このミス」のランキングで名前を見なくなりました。
しかし、2014年(2015年版)にはNo.956「喝采」で実に18年ぶりとなる「このミス」ランクインを果たすと、昨年(2016年版)にはNo.842「血の弔旗」で20年ぶりのベスト10入りとなるなど、ここに来て高評価のハードボイルド作品を2年連続で世に送り出しているのですね。
そして本作は、ジャンルや分量的に3年連続ランクインの期待を背負うことになるのではないかと思われる、2016年の新作となっています。
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三十代で起業し羽振りの良い派手な生活を送っていたものの、バブル崩壊により会社は倒産し五千万円の借金を抱え妻とも離婚し、今は自動車修理工場で働いている氏家豊。
ある日、客の車であるマスタングのテストドライブをしていると、旧友・五十嵐勇蔵の娘が拉致されるのを見掛け、なんとか救出に成功したものの、数日後に今度は氏家自身が拉致され暴行を受ける羽目に。
この窮地を逃れた氏家は、銀行員である勇蔵から不正融資絡みのトラブルに巻き込まれていることを告白され、さらには借金を肩代わりしてくれた(元妻の実兄でもある)富沢新太郎が殺害された現場の第一発見者となったり、勇蔵が失踪したり、その勇蔵と新太郎が結託して不正融資を行っていることが明らかになるなど、不穏な動きが次々と起き始めます。
そのため、氏家はマスタングの持ち主である料亭の女将・澄子や元妻の尚子らの協力を得つつこの事件・騒動の真相を積極的に探っていくことになるのですが、様々な関係者と会って新たな敵や味方を作りながら人脈を辿っていくことで真相に近づいていく展開や、(一般人ではあるものの)探偵のような行動力や閃きを持ち渋かっこいい男臭さを放つまさにハードボイルドの主人公といった氏家のキャラクターなど、作品全体からハードボイルド小説の魅力が熱気と共に湧き上がって来るかのような読み応えがあります。
そこに、(バブルが弾けて間もない時期の)昭和の時代ならではの描写が盛り込まれていたり、車やタバコなどの小道具が絶妙なアクセントとして使われているなど、当時の雰囲気を匂わす演出がこれまた渋かっこよく、惹き込まれてしまうほどのハードボイルド的世界観を作り上げているのですね。
ただ、(犯罪サスペンス要素のある)探偵ハードボイルド小説としては王道中の王道といった感じの展開が続いていくので、(倒叙形式だったり昭和史的だったり犯罪小説風だったりと)ハードボイルドの新たな切り口が冴えまくっていた『血の弔旗』と比べると新鮮味は感じられないかもしれませんが、王道だからこその安定した面白さがありますし、“これぞハードボイルド!!”といった魅力をストレートに堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
☆☆★★★ : 本格ミステリ度
☆☆★★★ : ビックリ驚愕度
☆★★★★ : 熱アクション度
☆☆★★★ : 鬼畜グログロ度
☆★★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆★★★ : 人間味ドラマ度
☆☆☆★★ : 感涙ウルウル度
☆★★★★ : 下ネタエッチ度
☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
☆☆☆★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “藤田宜永” 関連記事 】
> No.1116 「ブルーブラッド」
> No.0986 「タフガイ」
> No.0956 「喝采」
> No.0897 「亡者たちの切り札」
> No.0842 「血の弔旗」
> No.0275 「ダブル・スチール」
> No.0271 「敗者復活」
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