『アメリカ最後の実験』 宮内悠介 > 「このミス」完全読破 No.876
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.876
『アメリカ最後の実験』 宮内悠介
「このミス」2017年版 : 62位
受賞(候補) : (「山本周五郎賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 10位
読始:2016.3.24~ 読終:2016.3.31
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年1月>
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宮内悠介は、デビュー作のNo.611「盤上の夜」で日本SF大賞、その翌年に発売のデビュー2作目No.664「ヨハネスブルグの天使たち」で日本SF大賞(特別賞)を受賞し、両作共に「ベストSF(SFが読みたい!)」で2位にランクインと、デビューから2作連続でSF作品としての高い評価を受けました。
しかも、2作共に(広義のミステリが対象となる)「このミス」にランクインして(エンタメ小説全般が対象となる)直木賞の候補となるなど、SFというジャンルの枠を超えた高い評価をも受けることに。
そして昨年(2015年)に発売されたデビュー3作目にして初長編のNo.841「エクソダス症候群」は(「このミス」や直木賞などSF以外のジャンルでの結果は出なかったものの)「ベストSF2015」で3位にランクインし、4作目となる本作は山本周五郎賞の候補に選出されるなど(受賞はならず)、デビューから4作連続で具体的な高評価(賞やランキング)を受けているというとんでもない作家なのですね。
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主人公は日本人の脩で、かつて自分と母を棄ててアメリカに渡り行方をくらました父親を探し出すため、アメリカの西海岸に渡りグレッグ音楽院の試験を受けることに。
このグレッグ音楽院というのは、父親も受験していたらしい難関音楽学校で、脩は“音楽はゲームであり、競争だ”という冷めた信念と高い演奏技術によりハードルの高い試験に挑んでいくのです。
同じ受験生である(訳ありな)仲間や父と関わりのあった人々と出会ったり、父が発明した不思議な楽器を手に入れつつ、難易度の高い試験に立ち向かっていく展開は少年漫画のようなワクワク感がありますし、試験会場で謎めいた殺人事件が起きたり、そこからアメリカ中に連鎖して殺人事件が続いていくなど、ミステリやサスペンスなど様々なエンタメ要素で物語が彩られていきます。
そしてもちろんメインテーマである“音楽”においても、(演奏シーンや試験シーンなど様々な場面で)文章によって魅惑的な音が奏でられていくだけでなく、演奏家の心情や生き様、さらには音楽そのものについての考察が描かれるなど、音楽小説ならではの読み手の心にリズムを刻み込むような読み味が感じられました。
ただ、今回はSF要素が控えめですし、他のエンタメ的な要素もそれぞれが主役を張るほどのガッツリとした読み応えはないので、それらを期待してしまうと(長編ということもあり)物足りなさを覚えてしまうかもしれません。
とはいえ、そんな様々なエンタメ的魅力を掛け合わせつつ、音楽やアメリカや家族といったテーマにより色鮮やかで深みを持つ物語を生み出しているのは著者ならではだと思うので、これまでの宮内作品とは少しタイプが異なるけれども宮内作品らしい(だからこその)面白さも堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
☆☆☆★★ : 本格ミステリ度
☆☆☆★★ : ビックリ驚愕度
☆☆☆★★ : 熱アクション度
☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
☆☆★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆★★★ : 人間味ドラマ度
☆☆★★★ : 感涙ウルウル度
☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
☆★★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “宮内悠介” 関連記事 】
> No.948 「月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿」
> No.894 「彼女がエスパーだったころ」
> No.876 「アメリカ最後の実験」
> No.841 「エクソダス症候群」
> No.664 「ヨハネスブルグの天使たち」
> No.611 「盤上の夜」
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