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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.898
『301号室の聖者』 織守きょうや
「このミス」2017年版 : 投票数0
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2016.7.6 ~ 読終:2016.7.15
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年3月>
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織守きょうやは、デビュー以来“講談社BOX”からの刊行が続いていたのですが、昨年(2015年)にNo.838「黒野葉月は鳥籠で眠らない」で初めて一般レーベルから新作を発表。
すると、「このミス」で19位、「本格ミステリ・ベスト10」で18位にランクインし、いきなりミステリ作品として高い評価を受けることに。
さらには同じく昨年に"京谷"名義にて日本ホラー小説大賞(読者賞)を受賞した『記憶屋』が、今年(2016年)7月時点ですでにシリーズ3作目まで刊行されヒットしているなど、人気・実績共に急上昇中の作家なのですね。
そして本作ですが、『黒野葉月は鳥籠で眠らない』に続く“木村&高塚弁護士シリーズ”の2作目となります。
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新人弁護士の木村は、事務所の顧問先である笹川総合病院で起きた(医療過誤訴訟を巡る)損害賠償請求事件の担当となり、調査のため病院に通っているうちに、(この件で亡くなった患者がいた)301号室に入院している患者やその家族らと顔見知りになり、その窓向かいの(個室の)病室に入院中の少女・早川由紀乃とは友達に。
そんな中、301号室で立て続けに不自然な医療事故が起きたため、木村は訴訟に対する準備を進めつつ、それら医療事故の原因を探っていくことになります。
というわけで、前作は連作短編形式でしたが、今回は(シリーズ初の)長編となっています。
主人公は病院側の弁護士なので、(医師や看護師は)人手不足のため常に忙しく動き回っていても全てに手が回らなかったり、細心の注意を払って業務に当たっていても誤嚥事故などは防ぎきれなかったり、それでも医療訴訟を起こされてしまうなど、医療現場の厳しい現状が(木村の視点で)描かれていきます。
ただその一方で、木村が(依頼者や訴訟事件の相手側など)関わりのある人たちに対しても(職務に影響を及ぼすほどに)感情移入してしまう性格ということもあり、医療訴訟を起こす(可能性のある)患者側の心情等も描かれているため、(第三者的立場の)弁護士の視線だからこその(病院を舞台とした)ドラマが繰り広げられるのですね。
そしてミステリ的には、木村にアドバイスを送る先輩弁護士・高塚の推理というか洞察力は相変わらずの鋭さですし、前作同様に法律の抜け穴や隙間を突くことで驚きや急展開を生み出すなど、このシリーズならではのミステリ的刺激は健在だったように思います。
ただ、主人公の悩める心情描写が多いということもあって、このシリーズはすっきりと切れのある読み味が作られやすい(前作のような)連作形式の方が合ってるようにも感じましたし、謎(真相)自体もそこまで意外性があったり驚愕を誘ったりするわけではないので、前作と同様の面白さやミステリ的な部分のみに期待してしまうとあまり手応えを感じられないかもしれません。
とはいえ、このシリーズは主人公が苦悩しもがきつつ(弁護士としても人間としても)成長していくドラマこそがメインですし、今回はそんな主人公の成長譚が長編でじっくりと描かれ、ミステリ的な謎や真相も主人公が成長するためのきっかけを与える役割となっていたので、“弁護士である主人公の成長ドラマ”部分を軸として読めばこの良質な読み味のリーガルミステリ作品を堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
☆☆★★★ : 本格ミステリ度
☆☆★★★ : ビックリ驚愕度
☆☆☆☆★ : 熱アクション度
☆☆☆☆★ : 鬼畜グログロ度
☆★★★★ : 主キャラ魅力度
☆★★★★ : 人間味ドラマ度
☆★★★★ : 感涙ウルウル度
☆☆☆☆★ : 下ネタエッチ度
☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
☆★★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “織守きょうや” 関連記事 】
> No.898 「301号室の聖者」
> No.838 「黒野葉月は鳥籠で眠らない」
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