『罪の終わり』 東山彰良 > 「このミス」完全読破 No.889
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.889
『罪の終わり』 東山彰良
「このミス」2017年版 : 111位
受賞(候補) : 「中央公論文芸賞」受賞
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2016.5.28 ~ 読終:2016.6.2
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年5月>
罪の終わり 東山 彰良 新潮社 2016-05-20 売り上げランキング : 9286 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東山彰良といえば、昨年(2015年)に発売されたNo.829「流」が選考委員の大絶賛と共に直木賞を受賞した影響で、一般的にも名の知れた作家に。
ただ「このミス」的には、2009年のNo.176「ジョニー・ザ・ラビット」で初ランクインを果たしていましたし、2013年のNo.689「ブラックライダー」は3位にランクインするなど、すでに高い評価を受けていました。
そして本作はそんな『ブラックライダー』のシリーズ続編なのですが、前日譚的な物語ということもあり、前作を読んでいなくても問題ないですし、(前作を読んでいないのであれば)かえって本作から読んだ方が前作を読んだ時にその作品世界に入っていきやすいかもしれませんね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『ブラックライダー』は、小惑星の衝突により文明が崩壊するほどの被害を受け、(19世紀後半の西部開拓時代を思わすような)荒れた無法地帯の世界となった近未来のアメリカが舞台となっていて、本作はその100年前(小惑星衝突前後)の世界を描いた前日譚です。
もう少し具体的に説明しますと、『ブラックライダー』の世界では黒騎士(ブラックライダー)と呼ばれる伝説の存在が語り継がれているのですが、そんな“黒騎士伝説”について、かつて敵対者として黒騎士と関わりのあったネイサン・バラードを語り手として(伝説を検証・考察した本を執筆しているという体裁で)描かれていきます。
悲劇的な出生秘話から始まり、双子の兄と過ごした悲惨な少年時代、そして小惑星の衝突による世界の崩壊を経て、数々の奇蹟を起こし伝説の男となっていく黒騎士(ナサニエル・ヘイレン)の物語は、一つ一つのエピソードが胸をえぐるような衝撃性がありますし、翻訳小説を思わすような文体で綴られ、イエス・キリストや聖書と照らし合わせて語られていくことにより、まさしく神秘性をまとった“伝説の書”と成っているのです。
さらには、文明が消滅して食人が横行するほどに荒れ果てるなど絶望的で暴力的で混沌とした『ブラックライダー』の凄まじき世界に至るまでの“崩壊の歴史”でもあるので、その世界観は(『ブラックライダー』同様に)圧倒的で度肝を抜かれるほどの迫力がありますし、そんな恐るべき世界と現実世界との繋がりが(前作以上に)感じられるためより一層震撼させられたりもするのですね。
なので、本作単体で楽しめるほどの読み応えがあるものの、『ブラックライダー』のボリューム抜群で完成度の高い物語と比べてしまうとやはりどうしても“あくまで前日譚”といった捉え方(感想)となってしまうのではないかと思うので、本作のみで(この神話的世界観の体験を)終わらせるのではなく、本作の前か後に必ず『ブラックライダー』の方も読むことをお薦めします(ただ本作の世界観が合わなかった人にはお薦めできませんが)。
> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆
☆☆☆☆★ : 本格ミステリ度
☆☆☆★★ : ビックリ驚愕度
☆☆★★★ : 熱アクション度
☆☆★★★ : 鬼畜グログロ度
☆★★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆★★★ : 人間味ドラマ度
☆☆☆★★ : 感涙ウルウル度
☆☆★★★ : 下ネタエッチ度
☆☆★★★ : 衝撃バカミス度
☆☆★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “東山彰良” 関連記事 】
> No.1054 「夜汐」
> No.0984 「僕が殺した人と僕を殺した人」(後日更新予定)
> No.0889 「罪の終わり」
> No.0829 「流」
> No.0689 「ブラックライダー」
> No.0545 「ミスター・グッド・ドクターをさがして」
> No.0496 「ファミリー・レストラン」
> No.0283 「ライフ・ゴーズ・オン」
> No.0176 「ジョニー・ザ・ラビット」
「ミッドナイト・ジャーナル」本城雅人 <<< PREV
NEXT >>> 「ケムール・ミステリー」谺健二
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<
« ☆ 川崎F戦・プレビュー>2016年J1リーグ1st第15節(マリノス・データ・バンク) | トップページ | 「ユアガーディアン」 帆上夏希 > ジャンプGIGA vol.1 »
「01.「このミス」完全読破(ミステリ小説)」カテゴリの記事
- 「このミステリーがすごい!2022年版」ランキング(順位)予想(2021.02.03)
- 「このミス2022年版」月別ランクイン候補作品(2021年2月)(2021.01.31)
- 「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2021年1月)(2021.01.21)
- 「このミス2022年版」月別ランクイン候補作品(2021年1月)(2021.01.09)
- 「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2020年12月)(2020.12.20)