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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.888
『ミッドナイト・ジャーナル』 本城雅人
「このミス」2017年版 : 111位
受賞(候補) : 「吉川英治文学新人賞」 受賞
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2016.5.25 ~ 読終:2016.5.27
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年2月>
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中央新聞が、“誘拐事件の被害者女児の死亡”記事(直後にその女児の生存確認)という大誤報を打ってしまい、これに深く関わった記者たちはそれぞれ処分を受けることに。
この事件から7年後、地方局をたらい回しにされて現在はさいたま支局の県警キャップ記者となっている関口豪太郎は、埼玉県で発生中の児童連続誘拐事件に対し、7年前の事件との関連を疑い始めて.....。
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というわけで本作は新聞社が舞台の作品ですが、他社との(スクープ合戦を繰り広げる)ライバル関係や、少しでもスクープに近付くために難攻不落な刑事や警察官僚に迫って情報を引き出そうとする取材攻勢、自社内における派閥争いや出世争いなど、新聞記者の(執念の塊とでもいうべき)生き様が描かれていきます。
冒頭に7年前の大誤報のエピソードが置かれていることもあり、その後に続く物語では“スクープ”と“誤報”との境界線ギリギリで闘い続ける新聞記者たちの緊張感ある駆け引きが伝わって来ますし、新聞記者の取材方法・警察との関係・役職ごとの役割・誌面作りなどの描写は著者が元新聞記者ならではのリアルな読み味となっています。
それに、上司・同僚・部下との(仕事をしていくうえでの)激しいぶつかり合いがあったり、本社と支社との間に生じる軋轢、大手ではない新聞社がドデカイ仕事をやってのけようかという盛り上がりなど、組織ドラマとしての面白さも迫力あるものでした。
そして物語は何人かの視点で語られていくのですが、そのうちの一人である関口豪太郎というのが、スクープを取るためなら強引な取材でも敢行し、部下に厳しく上司に媚びず、ライバル社だけでなく自社(身内)にも敵が多くて、それでいて自ら“ジャーナル”と呼ぶ記者精神には誇りを持っているという強烈な人物でして、このキャラクターが物語(他の登場人物たち)を掻き乱していくことにより、単なる“事件の真相を追う新聞記者の物語”では終わらない圧倒されるほどに刺激的で魅力溢れる人間ドラマが生み出されていたように思います。
扱われる事件に関しては、次々と新事実が明らかになったり、派手で意外性のある展開が起きたり、ということはないので事件ミステリ部分を期待してしまうと物足りないかもしれないものの、事件の真相(スクープ)を追う記者の物語としても、新聞社という組織を描いた物語としても、警察小説(特に著者と同じく新聞記者出身である横山秀夫作品)と同じタイプの熱くて濃厚な読み応えがあるので、(多くの人にお薦めなのはもちろん)警察小説好きな人には強くお薦めしたい作品です。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
☆☆☆★★ : 本格ミステリ度
☆☆☆★★ : ビックリ驚愕度
☆☆★★★ : 熱アクション度
☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
☆★★★★ : 主キャラ魅力度
★★★★★ : 人間味ドラマ度
☆☆★★★ : 感涙ウルウル度
☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
☆☆★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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