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2016年6月30日 (木)

『生還者』 下村敦史 > 「このミス」完全読破 No.848

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.848

 『生還者』 下村敦史

   「このミス」2016年版 : 15位

   受賞(候補) : (「日本推理作家協会賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2015.10.21~ 読終:2015.10.22

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2015年7月>

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下村 敦史

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 下村敦史は、江戸川乱歩賞を受賞したNo.783「闇に香る嘘」で2014年にデビューすると、「このミス」「週刊文春ミステリーベスト10」でベスト3入り(乱歩賞受賞作としては「このミス」歴代最高順位)、「本格ミステリ・ベスト10」「ミステリが読みたい!」でベスト20入りと、年末恒例のミステリランキングで新人としては破格の評価を受けました。

 しかし衝撃的なデビューを飾った新人作家というのは2作目以降がなかなか出なくて(読者側からすると)気を揉んでしまうというパターンが多いのですが、翌2015年の頭に早くもデビュー2作目のNo.816「叛徒」、同年中に本作を発売し、本作にて「このミス」2年連続ランクインを達成。

 さらに2016年に入ってからも上半期だけで2つの新作を出すなど、(ただレベルの高い作品を発表するだけでなく)新たな魅力的な物語を次々と生み出してくれるのは読者的にも嬉しい限りですね。

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 ヒマラヤ山脈のカンチェンジュンガで雪崩が発生し、登山中だった日本人7名が巻き込まれる惨事に。

 被害者の弟である増田直志は、すでに登山をやめたはずの兄がなぜかヒマラヤに登っていたのか疑問を持ち、さらに兄の遺品であるザイル(ロープ)に(人の手によるものとしか思えない)切断面があったことから、兄の死に不審を感じ、この事故について調べていくことに。

 すると、雪崩事故から奇跡の生還を果たした高瀬という単独登山者が、マスコミが注目する中で(雪崩の前に)直志の兄ら登山隊から(一人を除いて)冷たい扱いをされたとコメントしたことにより、(故人であるにもかかわらず)兄たちは非難を受け、高瀬に対し唯一手助けしたメンバーが英雄扱いされるなどの大騒ぎに。

 ところが、もう一人生還者が現れ、高瀬とは全く逆の証言をしたことから、何が真実で何が嘘なのか分からない謎だらけの事態へとなだれ込んでいくのです。

 そんな次々と謎が謎を呼ぶ展開や目まぐるしく二転三転していく状況により、この山岳ドラマを中心とした物語に自然と惹き込まれていきますし、それが中だるみなどせず最後まで一気に駆け抜けてしまうところからも(これがデビュー2年目の作品とは思えないほどの)新人離れした力量が感じられました。

 さらにそこに、迫力満点の登山描写があったり、真相などにも登山家ならではの要素がガッチリと絡んでくるなど、山岳ドラマとミステリとの融合もインパクトを生み出しながら自然な演出となっているので、山岳ミステリが好きな人にお薦めなのはもちろん、山岳(登山)小説にあまり興味がないという人でも(あまりそこは気にせずに)軽い気持ちで手に取ってもらえればとお薦めしたくなる作品です。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆


 ☆☆★★★ : 本格ミステリ度
 ☆☆★★★ : ビックリ驚愕度
 ★★★★ : 熱アクション度
 ☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
 ☆☆☆★★ : 主キャラ魅力度
 ★★★★ : 人間味ドラマ度
 ☆☆☆★★ : 感涙ウルウル度
 ☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
 ☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
 ☆☆★★★ : 気軽に読める度

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  <個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “下村敦史”関連記事 】

  > No.1026 「黙過」
  > No.1011 「サハラの薔薇」
  > No.0848 「生還者」
  > No.0816 「叛徒」
  > No.0783 「闇に香る嘘」


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