『涙香迷宮』 竹本健治 > 「このミス」完全読破 No.884
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.884
『涙香迷宮』 竹本健治
「このミス」2017年版 : 1位
受賞(候補) : 「本格ミステリ大賞」受賞
(「日本推理作家協会賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 2位
「週刊文春ミステリーベスト10」 3位
「本格ミステリ・ベスト10」 4位
「黄金の本格ミステリー」 選出
「bookaholic認定国内ミステリーベスト10」 候補作
読始:2016.5.2~ 読終:2016.5.12
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年3月>
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関連シリーズ作品を(番外編や合本なども)合わせれば15作目となる“牧場智久シリーズ”の最新作です。
『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の“ゲーム三部作”を始めとして長きに渡り書き続けられている竹本健治を代表するシリーズですが、番外編を除けば2008年の『せつないいきもの 牧場智久の雑役』以来8年ぶりのシリーズ新作となります。
“囲碁の天才”である牧場智久を中心としたシリーズで、12歳の天才少年であった頃から、史上最年少で本因坊(日本棋院の七大タイトルの一つ)の座につき、その後も棋士として活躍する姿が描かれていきますし、そんな智久と関わってくる準レギュラー的な人物も徐々に増えてそれぞれが活躍を見せていくシリーズなので、やはりシリーズを通して読んだ方が楽しめるでしょう。
ただ、自分もこのシリーズどころか竹本作品すら今回が初読みでしたが、内容的には前作までを読んでいなくても問題なかったように思いますし、本作の巻末には「竹本健治 著作リスト&ガイド」が掲載されていて、そこに各巻の内容や登場人物について(すごく簡単にではありますが)書かれているので、あらかじめこれ読んでおけば(なおのこと)すんなりと物語に入っていけるのでは。
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対局を終えたばかりの智久は、近くの旅館で基盤に覆いかぶさるようにした遺体が見つかった事件に遭遇し、さらに数日後に(新たに発見された)黒岩涙香の隠れ家(遺跡)の発掘調査に同行すると、そこでも殺人事件に巻き込まれることに....。
この黒岩涙香は実在の人物で、翻案小説の執筆やゴシップ新聞『萬朝報』の創始者として主に明治時代に活躍した一方、自身が競技ゲームとして成立させた(五目並べから派生した)連珠や、創始者である競技かるたを始め、囲碁、花札、ビリヤード、相撲、野球、闘犬、歌舞伎、都々逸など当時の趣味娯楽の多くにのめり込み、いずれにおいてもプロ級の腕前に至っているという偉人です。
そんな涙香が仕掛けていた暗号に智久が挑戦していく場面が、二つの殺人事件を巡るストーリーと関わりながら描かれていくのですが、実際に読んでいけば分かるように、実は暗号解読ミステリ部分の方が本作のメインともいうべき内容となっているのですね。
連珠と(仮名48文字を一度ずつ全て使って作った詩である)いろは歌を用いた涙香の暗号というのがとにかく凄まじくて、特にいろは歌による暗号に関しては、その暗号を提示されただけであまりの超人的なとんでもなさに驚愕し圧倒され、暗号が生み出す奥深き迷宮にさまよいこんでしまったかのように錯覚するほどでした。
しかもこの暗号を作ったのはもちろん涙香ではなく著者自身であるため、著者に対しても(本作でやってのけたことに)驚くと共に称賛の拍手を送りたくなってしまいましたからね。
そんな暗号の前提知識として、序盤から涙香や連珠について、中盤以降はいろは歌などについての蘊蓄的話が盛り沢山となりますし、暗号に全く興味がないような人だと読み進めるのが辛くなるだろうし、殺人事件の謎の方は(この圧巻の暗号群を前にしては)添え物的扱いなので、読む人をかなり選ぶし楽しみ方を間違えてしまえば全く面白さを感じられないかもしれません。
ただやはり、鮮やかな暗号解読や殺人事件の謎との絡まり方なども含めて、暗号ミステリとしては究極の境地にまで到達した傑作だと思いますし、それでいて(専門知識部分以外の)物語的には小難しいことなく読みやすいので、ぜひとも“そんなすごい暗号ミステリとはどんなもんだろう?”という軽い気持ちでもいいので本作を手にしてみてほしいです(それで楽しめるかどうかの保証はしませんが)。
なお、連珠(五目並べ)についてほとんど知らなかったり忘れていたりすると、序盤の説明が全く分からずいきなり話についていけなくなるかもしれないので、Wikipediaなどで五目並べや連珠のルールについて簡単にでもいいので事前に目を通しておくと、そこら辺の説明に対する理解度がかなり増すと思います。
> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
☆★★★★ : 本格ミステリ度
☆☆★★★ : ビックリ驚愕度
☆☆☆★★ : 熱アクション度
☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
☆☆★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆☆★★ : 人間味ドラマ度
☆☆☆☆★ : 感涙ウルウル度
☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
☆★★★★ : 衝撃バカミス度
☆☆☆★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “竹本健治” 関連記事 】
> No.1122 「狐火の辻」
> No.0884 「涙香迷宮」
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