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「このミステリーがすごい!」完全読破 No.883
『殊能将之 未発表短篇集』 殊能将之
「このミス」2017年版 : 53位
受賞(候補) :
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2016.4.29~ 読終:2016.5.1
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2016年2月>
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殊能将之は、メフィスト賞を受賞したNo.16「ハサミ男」で1999年にデビューすると、「本格ミステリ・ベスト10」で2位、「このミス」「週刊文春ミステリーベスト10」でベスト10にランクインし、(後に発表された)ミステリのオールタイムベストランキングでも票を集めるなど高く評価され、今でも“どんでん返し系ミステリ小説”の話題になれば必ず名前が挙がるほどの時代を超えた名作となっています。
そんなデビュー作の後も、“名探偵・石動戯作シリーズ”の作品を中心に発表してマニア的な人気を得ていたものの、2004年のNo.951「キマイラの新しい城」以後は新作の発売が止まってしまうことに(2008年に短編を雑誌に発表したのみ)。
ただそんな期間にも、公式サイトの日記やTwitterに捻くれた表現や鋭い視点による遊び心に溢れた魅力的な文章を載せていて、ファンはそれらを基に2ちゃんねるなどで盛り上がりつつ新作の発売を気長に待ちわびていたのですが、残念ながら2013年に帰らぬ人となってしまいました。
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そして死去から3年後に発売されたのが本作となりますが、「犬がこわい」「鬼ごっこ」「精霊もどし」の未発表短編3作と、日記形式の作品「ハサミ男の秘密の日記」から成っています。
各作品が書かれた背景等については(巻末に掲載の)解説で詳しく説明されているのですが、簡単に紹介してみますと、未発表の3篇はいずれもデビュー作『ハサミ男』と同時期かそれ以前に書かれたもので、昨年(2015年)に講談社内にあった段ボール箱の中から偶然発見されたのだそうです。
デビュー前の作品であることや、雑誌「メフィスト」への掲載が(何らかの理由で)見送られたということから、どうしても作品内容に対してはあまり期待が持てなくなってしまうのですが、やはりミステリ要素はほぼないし(その後に発表される)長編作品とは作風が違うしガッツリとした読み応えはありません。
ただそれでも、比較的シンプルなストーリーながら独特な言い回しや演出がそこかしこに感じられて単純に面白いですし、なにより(未読作を残している自分が言うのもなんですが)もう読めないと思っていた新作(未発表作)をこうして読むことが出来ているということだけで(読みながら)感動して目頭が熱くなってしまったので、殊能ファンであれば間違いなく楽しむことが出来るのでは。
続く「ハサミ男の秘密の日記」は、友人の元に送られてきたという原稿で、死去後に「メフィスト」に掲載されたのですが、『ハサミ男』でメフィスト賞を受賞してからデビュー直前までを日記風に描いたもので、読み物として面白いのはもちろん、新人賞受賞作家の舞台裏や著者の私生活などをリアルな文章で知ることが出来る点でもかなり興味深い内容となっています。
そして巻末に収録の大森望による解説が、この未発表短篇集が発売されるまでの経緯などと共に、これまで謎に包まれていた(けれど関係者から“実は凄い人なんだ”という噂のみが漏れ出ていた)著者のデビュー前の経歴がついに明かされていますし、デビュー前から顔見知りだったからこその(裏話などが豊富な)愛のある解説となっているので、これを読むだけでも絶大なる価値があるでしょう。
そういった作品集であるため、これまで殊能作品を読んだことがあるかどうか、そして著者についてどれだけ知っているのか本作に対しての感じ方も違ってしまいそうではあるものの、(解説にも書いてあるように)本作を手始めにして他の作品(まず読むのにお薦めなのはもちろん『ハサミ男』)を読んでいくのも正解だと思うので、やはり多くの人に読んでほしいですね。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
☆☆☆☆★ : 本格ミステリ度
☆☆☆★★ : ビックリ驚愕度
☆☆★★★ : 熱アクション度
☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
☆☆☆★★ : 主キャラ魅力度
☆☆☆★★ : 人間味ドラマ度
☆☆☆☆★ : 感涙ウルウル度
☆☆☆☆★ : 下ネタエッチ度
☆☆★★★ : 衝撃バカミス度
☆★★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
【 “殊能将之”関連記事 】
> No.951 「キマイラの新しい城」
> No.883 「殊能将之 未発表短篇集」
> No.149 「黒い仏」
> No.054 「鏡の中は日曜日」
> No.016 「ハサミ男」
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