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2016年5月11日 (水)

『エクソダス症候群』 宮内悠介 > 「このミス」完全読破 No.841

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.841

 『エクソダス症候群』 宮内悠介

   「このミス」2016年版 : 73位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ベストSF2015」 3位

   読始:2015.9.24~ 読終:2015.9.27

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2015年6月>

エクソダス症候群 (創元SF文庫)エクソダス症候群 (創元SF文庫)
宮内 悠介

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 宮内悠介は、“創元SF短編賞(山田正紀賞)”の受賞作を表題作としたNo.611「盤上の夜」で2012年にデビューすると、日本SF大賞を受賞し、「ベストSF2012(SFが読みたい!)」で2位にランクイン。

 さらに翌年に発売されたデビュー2作目のNo.664「ヨハネスブルグの天使たち」も、日本SF大賞(特別賞)を受賞し、「ベストSF2013」で2位にランクインするなど、SFの世界で新人離れした高評価を2年連続で受けました。

 ただそんなSFの枠内だけでなく、2作共に(広義のミステリが対象となる)「このミス」にランクインして(エンタメ小説全般が対象となる)直木賞の候補となっているので、(ジャンルの超越、賞・ランキングの実績など)様々な意味で“規格外”な新人といえるでしょう。

 そしてデビュー3作目にして初の長編となるのが本作ですが(前2作はどちらも連作短編集)、今回はSF以外のジャンルでの結果は出なかったとはいえ、「ベストSF2015」で3位にランクイン(デビューから3作連続ベスト3)とSFではこれまでと負けず劣らずの評価を受けています。

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 舞台となるのは、すべての精神疾患が管理下に置かれているものの、普通に生活していた人が前兆なく突然に自死するという謎の病が流行している近未来の世界。

 この病により最愛の恋人を亡くした精神科医のカズキは、失意の中で生れ故郷である火星へと渡り、亡き父がかつて勤務した火星で唯一の精神病院・ゾネンシュタイン病院で働くことに。

 とはいえ火星はまだ開拓地であるためこの病院でもスタッフや薬などが不足していてかなりハードな仕事環境ですし、患者も医師もインパクトある人物揃いで、しかもこの病院内で現在進行形の事件が次々と発生したり過去に起きていた事件が浮かび上がってきたりもするので、カズキはそれらに翻弄されていくことになるのですね。

 そんな物語が、火星開拓地というSF的な舞台で、精神医療という知的好奇心をくすぐるテーマと共に、ミステリやサスペンスなどの要素でハラハラドキドキするような演出を加えながら展開していくので、(基本はSFなのだけれど)一つのジャンルにはとらわれないという宮内作品ならではのエンタメ作品としての魅力を堪能できるはずです。

 ただ、圧倒されるほどの人間ドラマが(連作)短編の中に破裂寸前なほどに凝縮されていた前2作と比べると(物語の)密度や濃度は薄めに感じられますし、(今回は「このミス」でそれほど票が入らなかったことからもわかるように)ミステリ・サスペンス的な要素もそれほど前面に押し出されているわけではないことから、前2作と同様の面白さを期待してしまうと物足りなさを覚えてしまうかもしれません。

 それでも、SFや精神医療などのジャンル・テーマに馴染みのない人でも難解に思うことなくエンタメ作品として読みやすく仕上げられていて、その一方でドラマやテーマ性には専門知識に裏打ちされた深みが生み出され読み応えあるので、前2作とはまた違った面白さを味わうことが出来るのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


 ☆☆☆★★ : 本格ミステリ度
 ☆☆☆★★ : ビックリ驚愕度
 ☆☆★★★ : 熱アクション度
 ☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
 ☆☆★★★ : 主キャラ魅力度
 ☆☆★★★ : 人間味ドラマ度
 ☆☆☆★★ : 感涙ウルウル度
 ☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
 ☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
 ☆☆★★★ : 気軽に読める度

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  <個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “宮内悠介” 関連記事 】

  > No.948 「月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿」

  > No.894 「彼女がエスパーだったころ」
  > No.876 「アメリカ最後の実験」
  > No.841 「エクソダス症候群」
  > No.664 「ヨハネスブルグの天使たち」
  > No.611 「盤上の夜」


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