『うそつき、うそつき』 清水杜氏彦 > 「このミス」完全読破 No.870
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.870
『うそつき、うそつき』 清水杜氏彦
「このミス」2017年版 : 127位
受賞(候補) : 「アガサ・クリスティー賞」 受賞
総合ランキング :
年度ランキング :
読始:2016.1.21~ 読終:2016.1.29
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"
読んだ版 : 単行本 <2015年11月>
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清水杜氏彦は、昨年(2015年)の6月末に短編「電話で、その日の服装等を言い当てる女について」で小説推理新人賞を受賞。
さらにその翌月には本作にてアガサ・クリスティー賞を受賞したので、わずか一月の間に2つの新人賞に輝くという驚きの快挙となったのです。
となれば作品に対する期待は自ずと高まるのですが、先に発売されてデビュー作となった本作は新人作家の作品としては上々の評価を得ているようなので、高い期待を易々と乗り越えていくような注目のミステリ作家となっていきそうですね。
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舞台となるのは、国民管理のために(嘘をつくと赤く光るランプが付いた)首輪の着用が義務付けられた国で、主人公は依頼を受けて非合法に首輪を外すことを仕事としている少年・フラノ。
この首輪は“(外すための)破壊行為”を察知すると一定時間後に(首輪内に仕込まれた)ワイヤーが動き出して装着者を窒息死に至らしめるため、フラノの除去技術というのは“ワイヤーを時間内に取り除いてダミーのランプに取り換える”という作業になります。
そんな首輪の除去を依頼してくるような人はやはり犯罪者がほとんどであるものの、フラノはこの技術を“正義のために使いたい”と考えているため、フラノへの依頼者は(犯罪者ではない)一般人が多くなるのですが、一般人であるとはいえ自らの命の危険を冒してまで首輪除去を望む人というのはそれだけ深刻な理由(ドラマ)が存在するわけです。
そんな依頼者たちの人間ドラマに、首輪除去者としての迷いや葛藤・成長物語などフラノ自身のドラマも掛け合わされていくことにより、閉塞感漂うディストピア的な作中雰囲気や設定もあって、ダークで切なく胸を締めつけられるようなドラマ性や作品世界が魅力的に生み出されていたように思います。
ただ、長編として一本の大きな流れのある物語というよりは、エピソードを積み重ねていくことで全体的な物語を膨らませていくという連作に近い構成となっていますし、ミステリ要素もそれほど強く出ていないので、ストーリー的(サスペンス的)な面白さを期待したり、(“ミステリの女王”の名を冠した賞ということで)本格ミステリ作品としての期待をしてしまうと、あまり手応えが感じられないかもしれません。
それでも、フラノに関する謎が次第に呼び起されていってクライマックスへと繋がっていく展開によって長編作品としての軸が作られミステリ的な読み味もありますし、やはり全体的に見ても新人離れしたレベルの作品であるのは間違いないので、退廃的な近未来SF系世界観や悩み苦しみながら成長していく青春物語などが肌に合うのであれば本作の魅力を大いに堪能できるのではないでしょうか。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆
☆☆☆★★ : 本格ミステリ度
☆☆☆★★ : ビックリ驚愕度
☆☆☆★★ : 熱アクション度
☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
☆☆★★★ : 主キャラ魅力度
☆☆★★★ : 人間味ドラマ度
☆☆★★★ : 感涙ウルウル度
☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
☆☆★★★ : 気軽に読める度
* 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
(★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
<個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください
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