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2016年2月25日 (木)

『真実の10メートル手前』 米澤穂信 > 「このミス」完全読破 No.872

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.872

 『真実の10メートル手前』 米澤穂信

   「このミス」2017年版 : 3位

   受賞(候補) : (「直木三十五賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 1位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 2位
              「本格ミステリ・ベスト10」 7位
              「bookaholic認定国内ミステリーベスト10」 候補作

   読始:2016.2.13~ 読終:2016.2.17

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2015年12月>

真実の10メートル手前真実の10メートル手前
米澤 穂信

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 米澤穂信はもう何年にも渡って年末恒例ミステリランキングの常連となっているのですが、2014年(2015年版)にはNo.748「満願」、昨年(2015年/2016年版)にはNo.828「王とサーカス」にて、「このミス」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」の3誌で1位、つまりは2年連続で三冠を達成しているので、今が一番脂の乗り切った時期といえるのかもしれませんね。

 そして本作は、昨年の三冠作品『王とサーカス』に続く“〈ベルーフ〉シリーズ”の2作目で、『王とサーカス』と同年に発売となりました(ミステリランキング的には翌年版扱い)。

 前作が長編だったのに対し、本作はこれまで雑誌やアンソロジー作品に掲載された短編に書き下ろし1編を加えたシリーズ短編集なので、どちらの作品から読んでも問題なく楽しむことが出来ます。

 ただ両作共に、このシリーズの派生元とでも言うべき位置付けであるNo.817「さよなら妖精」(本作の主人公の高校時代を描いた作品)のストーリー的なネタバレがあるので、いずれ読むつもりがあるのならばまずは『さよなら妖精』から読むことをお薦めします。

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 というわけで本作ですが、「真実の10メートル手前」「正義漢」「恋累心中」「名を刻む死」「ナイフを失われた思い出の中に」「綱渡りの成功例」の6編を収録。

 ちなみに、「ナイフを失われた思い出の中に」はアンソロジー作品No.315「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」に収録されていたものですが、舞台となる街の名前が“蝦蟇倉”から“浜倉”に変更されていました。

 主人公はフリーの雑誌記者である太刀洗万智で(新聞記者時代の話もあり)、取材対象である事件の謎に対し主人公ならではの視点や推理で迫っていくのですが、そんな謎や推理が(すっきりしていながらも深みが感じられる)物語の中に絶妙に溶け込んでいますし、短編ならではの鮮やかなミステリ的演出や(後味が良くないながらも)読後まで胸に染み入り続ける人間ドラマなどは(三冠作品であるノンシリーズ短編集『満願』の例を出すまでもなく)さすがの素晴らしさです。

 そこにさらに、時には他人のプライバシーを覗き見ることになったり、知り得た真実をどこまで公表するべきかなど、主人公がジャーナリストだからこその葛藤や信念、そしてそこから湧き上がって来るテーマ性が物語の中の重要なアクセントとして加わることで、このシリーズならではの刺激的な読み味が生み出されていました。

 それに、主人公と行動を共にする人物の目線で語られていくことにより(例外の話もあり)、主人公のキャラクター的な魅力が(人間的にも謎解き役としても)話を追うごとに増していくと思うので、長編と短編集との違いから前作ほどの読み応えはないかもしれないものの、(過去の実績からどうしても高く設定してしまう)期待を裏切らない面白さを多くの人が堪能出来るのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆


 ★★★★ : 本格ミステリ度
 ☆☆★★★ : ビックリ驚愕度
 ☆☆☆★★ : 熱アクション度
 ☆☆☆★★ : 鬼畜グログロ度
 ★★★★ : 主キャラ魅力度
 ☆☆★★★ : 人間味ドラマ度
 ☆☆☆★★ : 感涙ウルウル度
 ☆☆☆★★ : 下ネタエッチ度
 ☆☆☆★★ : 衝撃バカミス度
 ★★★★ : 気軽に読める度

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  <個人的評価&項目別評価>の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “米澤穂信” 関連記事 】

  > No.1123 「巴里マカロンの謎」
  > No.1099 「Iの悲劇」(後日更新予定)

  > No.1050 「本と鍵の季節」
  > No.0961 「犬はどこだ」(後日更新予定)
  > No.0942 「いまさら翼といわれても」
  > No.0872 「真実の10メートル手前」
  > No.0828 「王とサーカス」

  > No.0817 「さよなら妖精」
  > No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」
  > No.0748 「満願」
  > No.0622 「リカーシブル」
  > No.0402 「折れた竜骨」

  > No.0366 「ふたりの距離の概算」
  > No.0365 「遠まわりする雛」
  > No.0315 「蝦蟇倉市事件2(街角で謎が待っている)」
  > No.0250 「秋期限定栗きんとん事件」
  > No.0227 「追想五断章」

  > No.0140 「儚い羊たちの祝宴」
  > No.0076 「インシテミル」
  > No.0044 「ボトルネック」
  > No.0040 「夏期限定トロピカルパフェ事件」
  > No.0039 「春期限定いちごタルト事件」


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